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よーい、どん!〈裏〉
私はリーシャ。
幼き頃に両親を奪われた。
魔王討伐を掲げる一軍が私の住む集落に立ち寄った際、なんとなくムカついたという理由で酔っ払いの騎士に父は殺され、母は父が血に沈む光景を見たのか一目散に家に逃げ込んだもののドアを蹴破られて中に押入れられて連れ去られた。
神さまにどうか見つかりませんように……そう頼んだが見つかってしまった。
母が家に逃げ込んできたせいだ。
母は暴行をされながら何処かへ連れ去られた。
私たち2人、私と私の弟も鎖につながれ奴隷に身を落とした。
ただただ理不尽だった。
幼すぎたという理由で私は暴行を受けなかったが、弟は幼すぎたという理由でみるみる弱り途中で死んでしまった。
ご飯はまともに食べれず、糞尿を檻の中で垂れ流し死んでいるのか生きているのかわからないような人間たちと同じ檻に閉じ込められる。
弟は私に「もっ…と……生きたかった……」そうか細い声で語りかけて息を引き取った。
神さまに弟を救って欲しいと頼んだが叶わなかった。
私たちを襲った騎士たちはお話に聞いた高潔な存在ではなかった。
まだ山賊の方がマシなくらい。
唯一褒められのは身だしなみが良いと言ったところ。
騎士たちはよる村、よる町で放火に殺人まで行いを魔王討伐の大義を盾に行っていた。
唯一神の定めた欲のままに生きてはならぬという教えを破り本能が疼くまま殺し犯し貪り食う騎士たちに天罰が下ることはなかった。
それに対し、毎日生きられたことに感謝し貧相な食事でも不満を言わず盗みも殺しもしない信徒たる私たちがこんな目にあっていることを看過している神に対し私は存在を疑い始めていた。
同じ村で捕らえられた人たちは次々と病に倒れ気まぐれに殺され死んでいったが、いく先々で人を捕らえていったために奴隷は増えていった。
途中で弱った奴隷や死んだ奴隷は道端に投げ捨てられた。
それがまだ優しいくらいで特に狂った騎士たちは、死体に暴行を加えたり腹を裂いて内臓を引っ張りだしたり、やりたい放題していた。
次殺されるのは自分かもしれない。
まだ死にたくない。
神さま、助けてください。
祈る私に神は答えてくれなかった。
しかし答えてくれた人がいた。
それが私の人生を変えてくれた人。
ガディアスさんだった。
以前、騎士たちに村を焼かれ住む所を失い山賊なったというガディアスさん率いる24人の賊は、手際よく騎士たちを殺し私を救ってくれた。
山賊といえど彼らと同じ境遇だった私たちは、保護された。
彼らは騎士を殺し、理不尽な目にあった被害者を仲間に加えて行き、段々と規模が大きくなっていった。
非戦闘員を含め300人を超えた時、急に山賊をやめると言い出した。
何を血迷っているんだと言い出すみんなの前で古参の人たちは説明をしてきた。
我々は増えすぎた。ゆえ、やり方を変えるべきだと。
山賊をやめた私たちは、傭兵団となった。
人類は魔王軍に攻撃されているというのに人間同士でも争っていた。
そこで足りない分の兵力を金で雇われていたのが傭兵というわけだった。
私たちに理不尽な目に合わせた祖国に敵対している国の軍に雇われて祖国に復讐をすることになった。
だけど私に復讐の憎しみはなかった。
山賊だった頃、我は騎士を殺した。そこに怒りはなかった。
山賊だった頃、病人を殺した。そこに悲しみはなかった。
山賊だった頃、こっそり赤子を森に捨てていた。それに苦しみはなった。
私が山賊になった時、何度祈っても届かなかった神の声が聞こえるようになった。
父が熱心な宗教家だったおかげで、私の心持ちは出来ていた。
考えるな、信じろ。
神は間違えない。
私は騎士を殺した"経験値を稼ぐために"
私は病人を殺した"状態異常にならないために"
私は赤子を捨てた"育成の足を引っ張らないために"
そして山賊というあり方はいけないと提案したのも神の声を聞いた私だった。
そして山賊でいたい愚か者に毒を盛って殺したのも私だった。
"経験値"を得て強くなった私は傭兵になってからは最前線で戦った。
それが定めだと言われたから。
神の定めでは私は最前線で戦い必ず生き残る。その言葉通り一人で敵陣に侵入して殺し回っても不思議と死に繋がる攻撃は受けなかった。
幼かった私は、戦時で育った。
いつしか成熟した精神と神以外には動かない鋼の心と強い信仰心を手に入れた。
神は私に何から何まで指示をした。
その中にスキルを習得しろ、という内容がなかった私はスキルを一つも習得せず己の技量のみで戦った。
傭兵団の仲間には舐めてるのかと常々言われたが、"それを神が許してない"の一言で突っぱねた。
元山賊でした、なんて堂々といえば、極刑に処されてしまう。
私たちはもともと町に住んでいたが戦火から逃げるために町から出たが大所帯なのですぐに資金が尽きて仕方なく傭兵家業をして戦えない者を助けているんだと心にもない嘘を言っていた。
私を拾ってくれたガディアスさんや他の古参の人たちは本気で非戦闘員を守りたいと思っていたようだが私は思っていなかった。
彼らは戦場に出て戦わない言い訳をいう。やれ子供だから、やれ子供を育てるため、やれ後方支援が必要だの。
子供だから?戦っている私がいる。戦えるはずだ。
子供を育てるため?こんなにたくさんいるのだから誰かに世話を頼んじゃいけないわけ?
後方支援が必要?全体の6割も非戦闘員なのに、そんなに必要ない。
私も内心怒っていたし、神も不必要な人間は処分すべきだと唱えた。
敵対する傭兵団に取り入って非戦闘員を襲わせたこともあった。
井戸に毒を入れて間引きもした。私たちも飲んだが戦場で毒慣れしていたために死ななかった。
そんなことをしていると流石にバレることもあった。そんな時用に配合してある毒慣れした戦士でも死ぬ猛毒で暗殺した。
全ては闇の中。
人が死ぬたびにみんなは怒りに燃えた。
みんないい人だった。
頭にまで筋肉が詰まっているのではないかと思ってしまうくらい単純だった。
大規模な傭兵団となれば新規で加入するメンバーや擦り寄ってくる商人もいた。
勘の鋭い人間はもちろん殺した。
商人に流石に殺しては取り替えしが繋がないから、人質を取って余計なことを言わないようにした。
そうしていく中でいつのまにか終戦した。祖国は負けた。私たち傭兵団の活躍も大きかった。
私たちが加担した国の王は、傭兵団の活躍を褒め称え全員に市民権と家を与えた。特に戦場で素晴らしい働きをした戦士には騎士称号と莫大な報奨金を与えると約束したが、私は辞退した。
「この世界の危機は迫っている。人間だけが敵ではない。魔王を倒さねばならない」
神の宣託通り話した私は、幼くして魔王討伐に向かおうとする高潔な精神の持ち主とされ王や貴族たちに祝福された。
ただで魔王のいる大陸にまで運んでもらえることになったのはよい話だと思う。
名前とかどうでもよかったからわからないけどガディアスさんと、それ以外の"モブキャラ"が私を見送っていた。
私は笑顔でお別れをした。
何の意味があるかわからなかったが、神が"ガディアスの好感度を上げてフラグを立てろ"と言ったのでそうした。
船は何十人も乗れるおっきなやつだった。沢山の大砲が取り付けられているのを見て戦場に大砲を並べて撃てばもっと簡単に勝てたのに、と内心思った。
揺れる船の旅は6か月にも及んだ。
酷い嵐で船が空に飛んでいるような不快な感覚だったが気持ちが悪くはならなかった。
傭兵団にいた時にやった嵐の中、敵首脳部への電撃交戦という無謀な作戦で幾度となく嵐の中を小舟で海を渡ったおかげで酔わなかった。
少女となり女性的な特徴を持ち始めた私に良からぬことをしようとした乗客の何人かは嵐の中不慮の事故で海に落ちてしまったが、割とよくあることなのでさして問題にならなかった。
船酔いして気持ちが悪いと言ってたのに酒を飲んでいたやつは馬鹿だと思った。
途中船は補給のために陸地に寄ったが私たちが降りる時間もなくすぐ海に出た。
嵐にとどまらず、海賊の攻撃にあったが海賊慣れしている好戦的な船員と乗り合わせた騎士と元傭兵団の私により殲滅、全員殺して魚の餌にしようと考えていた私に神が役に立つかもしれないから取って置くようにと言ったので五人くらいを縄と鎖で縛って船のI室に監禁した。
出航して5か月くらいの時、船より大きい海の怪物クラーケンの襲撃にあったが
神の宣託通りにとっておいた海賊の残党を生贄に捧げることで乗り切った。
そしてようやく陸地に到着し長い船の旅が終わった私は今までにはないほどの神のたくさんの声をきいた。
神は言った。試練(チュートリアル)は終わりだと。
そして私を使途(プレイヤーキャラクター)と定め、運命を導く(プレイする)と。
それに伴い新たな名を授かった。
RTA……リタと。
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