人類の落し物

着陸

「あー…、駄目だな」

ヒビキの諦めを孕む言葉に皆ため息をつく。やはり廃棄一歩手前の衛星では、快適で安全な宇宙移動は望めなかったらしい。地球着陸まで後ほんの少しであったというのに。

あ、落ちるな。
皆一様にそう感じ取り、各々衝撃に備える。

数秒後に訪れたのは、体を四方八方から嬲られるような衝撃と、耳を劈くような轟音だった。

衛星の耐衝撃シールドが働いたらしい。思っていたよりはましな被害だ。
と言っても、普通の人間であれば死んでいるであろう状況に再びため息が出る。身体を起こす気力がない。

「おーい。大丈夫ー？」
ヤクモの声が障害物の奥から届く。正直疲れたから一眠りしてしまいたいのに、無視するわけにもいかない。
声の方へ顔を向けると、ひび割れた壁から白い光が差していた。

仕方がない。安眠を得る為にはここでは心許ないし、そろそろ行動しなければ。

嫌々ながらも身体を起こした。光の通路が目にかかって煩わしい。ひびの間に手を差し込み、思い切り横に引いた。