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「おはようございます」 社長室でにこやかに笑う私の前で、社長は小さくなりながら「おはよう。長森さん」とヘラっと笑う。 「昨日の同行どうだったかな〜?なんて思ったんだけど」 だから、何故恐る恐る聞く?と思いながら私は口を開いた。 「特段何もご報告するような事はございませんでした」 まあ、あれは報告することではない…と昨日の2回のキスを思い出す。 「あ、そう?なら良かった。ちょっと心配で。…ところで、専属の話出てるの?」 そう聞いてくると言う事は、長門さんからは何も聞いてないと言うことか。 「私はお断りしているんですけどね。正直迷惑しているんです。私はスケ管専門だとお伝えしてるんですが」 なんて、絶対零度の微笑みで社長に返した。 「そうだよねー…。司は何考えてるのかな〜…、ハハハ」 なんて乾いた笑いで答える社長に、「さあ。私も存じ上げません。では仕事が溜まっていますので失礼します」と、トドメの笑顔を向け社長室を後にした。 席に戻り、メールのチェックを始める。昨日半日放置する事になったため、それなりにメールが来ていた。 クライアントごとに振り分けして、中身を確認するが、相変わらず長門さん宛のメールの多さにウンザリした。 元々、撮影は1週間に1回しか入れられない。他の日はデータの確認や補正、打ち合わせなど意外とする事はある。 けれど撮ってくれと言う依頼は山程来ていて、下手したら1ヵ月丸々費やすような写真集の依頼もあった。 長門さんのスケジュールを先まで見ながら予定を組まなくてはいけないが、なかなかに過酷なスケジュールに頭を抱えている。 専属になったら、いちいちお伺いを立てなくても、もっとダイレクトにスケジュールを組めるだろう。 それはかなりのメリットだ…なんて思いがよぎりハッとした。 全部私の手から離れたらこんな事考える必要もないんだ…。 なんか、もう思惑通りになっていそうで大きな溜め息と共に机に突っ伏した。
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