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あー!!最悪っ!最悪っ! ヒール履いてるけど、最大限出せるスピードで家へ走る。 パーキングを出たらちゃんと駅前で、そこはホッとしながら。 カツカツと言う音で、前を歩く人々が振り返ってこちらを見るが、気にしてる余裕もない。 家に帰り着くと、まず洗面所に飛び込んで冷たい水を勢いよく出した。 そして眼鏡だけ外すとそのまま、バシャバシャ顔を洗った。 これをやるのは今日2回目だ。 1回目は昼間…。 私も仕事中だしと気が緩んでいた。それに、私の事を気にする素振りなど見せなかったのに。 人の唇を散々貪った挙句、『お前、その顔で戻ってくるの禁止な』なんてどれだけ上から目線なんだか。 でも、お手洗いに入り自分の顔を鏡で見たら…流石にそのまま現場に入るわけには行かず、思いっきり水で顔を洗って火照りを覚ました。 まさか、同じ事を帰りにもされるなんて、自分はどんだけ隙だらけだったんだろうと反省した。 しかも…無理矢理された筈のキスに、最後は応えてただなんて。 それ以前に、車の中で眠りこけるなんて、一生の不覚! よく寝込みを襲われなかったものだと思いつつ、私をどうにかしようなんて気はなくて、キスされたのも単に揶揄われているだけなのかなとも思った。 本当に…何考えてるのか全く分からない人だ。 今日の同行だって、私が必要だったのかと言えば全く必要はない。 じゃあ、単純に私に会いたかったから…なんて事はあの人に限ってないな。 新しい玩具を手に入れたから、しばらく遊んでやろう、くらいにしかきっと思っていないはずだ。 私は水が滴ったままの自分の顔を両手で叩くと顔を上げた。 考えてもしょうがない。私は私の仕事をしよう。 男に振り回される人生なんて…二度と御免だ。 そう思いながら、鏡に写る自分の顔を睨みつけた。
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