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気を取り直して、パソコンに向かう。 とりあえず、長門さん以外の案件を片付ける。こっちはまあすぐに終わった。 問題は長門さんの案件だ。 何が面倒かって、相手からのメールの文章が大体長い。 挨拶から始まり、おべっかだらけの内容が続き、ようやく本題…なんてのが多数。初めましての相手ほどその傾向が強くなり、毎回うんざりしながら目を通す。 ほんと、メールなんだから用件はちゃっちゃと言えっての! と心の中で悪態をつく。 私はそれをとにかく簡潔にまとめて、返信しやすいよう整えて長門さんに送るのだ。 基本的に連絡はメール。 それは他のクライアントも同じで、余程の緊急自体がない限りは電話はしないし、かかってもこない。 今日は溜まったメールを読むだけで半日が過ぎ、気づけばもう昼休憩だった。 あー…目の奥が痛い… コンビニで買ってきたサンドウィッチの入った袋片手に休憩室に向かう。 社長は結構、社員がちゃんと休んでいるか気にしてくれるから、休憩室も充実している。 前に誰かが肩こり酷いと言ったら、しばらくしてマッサージチェアが置かれていた。そしてそれに、私もよくお世話になっているのだ。 休憩室に入ると運良く誰もいなかったので、即マッサージチェアに身体を沈めた。全身リラックスモードなるものを押して、そのまま目を閉じて身体を預けた。 あー…気持ちいー…。このまま寝たいくらい…。 で、思い出す。昨日帰りに眠りこけた事を。 最近確かに遅寝早起き続きで寝不足だった。 それに加え、意外と長門さんの運転は優しくて揺れが心地良過ぎた。 目が覚める寸前、何か温かいものが私に触れたような気がした。 『王子様のキス』なんて言ってたけど、キスって言うより、何か大事な物にそっと唇で触れている…ような感じを受けた。 と言っても、まだ覚醒しきっていない頭だったから、私の妄想もプラスされてるかも知れない。 大体、あの人のキスなんて、いつも相手の都合お構いなし、自分が良ければそれでいい、勝手に喰ってハイ終わりの俺様仕様じゃないの。 ──結構…上手いけど。
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