飛ぶ頭部

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 大きな顔が空を飛んでいた。胴体は無かった。頭部だけだ。それは男の人の顔で頭は半分禿げあがっていた。40代か50代といったところか。俺は最初、幻覚を見たかと思って空中を飛んでいる顔を見たがそれはハッキリしていてニヤッと笑っているようにも窺えた。顔が飛んでいたのはマンションの10階より上だったし、都会の真ん中だったので子供が凧を飛ばしているわけでもなく思える。それに、明らかに球体だ。あんな形の凧があがるとは思えない。  バケモノを見た。そう思った。回りに人がいたら真っ先に確認しただろうが、ここは車の通りはあるものの人の姿はない。俺は空に飛んでいる顔を見ながら呆けたように口を開けていた。行き交う車は顔に気が付かないようで一定のスピードで道路を走る。  俺は暫くの間それを見ていたがハッとして急いで家に向かう。あのバケモノがこっちにやって来たら大変だ。マジ怖くて卒倒するかもしれない。空飛ぶ顔についてスマホで検索してみよう。もしかしたら超常現象の1つで見た事のある人はいるのかもしれない。  家に帰ってスマホで空飛ぶ顔について調べた。有力な情報は無かった。あのバケモノはいったい何だ!?俺は頭を抱えた。そう言えば3年前に死んだ叔父に似ている。俺は叔父と仲が良かったが重度の糖尿病で床に臥せってから会いにいかなくなった。中学2年生くらいの時に亡くなったから遡って考えれば1年は避けていた。元気だった叔父が弱ってくるし、そんな病人の顔を見るのが怖かったせいもある。あの空飛ぶ顔は叔父の幽霊か?でも夕方だが昼間の空に幽霊が出るのだろうか。それも顔だけ空を飛ぶだなんて。
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