飛ぶ頭部

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 次の日の朝に由奈ちゃんに連絡した。親戚の人が来ているので初もうでは行けないんだと言う。 「イケメンの伯父さんなの、画像を送るねー」  メールに添付された画像を開いてハッとした。フライングフェイスだ!間違いない。由奈ちゃんの親戚だったのか。でも何で生霊のバケモノになったんだ?  後日、学校が始まってから由奈ちゃんに伯父さんが出たことを話した。顔だけがさ、頭部がさ、空に浮かんでいるんだよと言った。由奈ちゃんは、あっと驚いて「実はね、伯父さん、ゲイなの」と告白してくれた。えっ、ゲイって俺に気があるってこと?でも初もうでで厄除けしてから現れたことが無い。詳しく話を訊くと、最近になっていきなり身体の調子が悪くなったんだと言う。その状態でフラフラ夜道を歩いていたら車にも引かれそうになったらしい。 「俺さ、お見舞いに行ってあげようかな」 「え」 「持ち歩けるLEDをお土産に。車が危ないだろう」 「え、じゃあ、私も一緒に行く」  俺たちは空を見上げた。もう何も飛んでいなかった。強い風が古い一戸建ての家にあるテレビのアンテナを揺るがしている。ちょっと寂しくなった。  終わり  
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