飛ぶ頭部

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 そういえば以前、小さい時に妖怪大全集で飛頭蛮というのを見たことがある。確か中国の妖怪だったか。ろくろ首の親戚みたいな妖怪だった。この辺りは中国人も沢山住んでいる。中国の妖怪が空を浮遊していた可能性も否めない。  あーでもない、こうでもないと思考を繰り返していると夜になった。俺は1階に行き、居間の炬燵に潜り込む。今年は寒い。今日はかなり風が強かった。そうか。あの顔はこんな強い北風の中飛んでいたんだ。凧の可能性は消えたな。もしかしたら風船かもと考えていたのだがそれもボツだ。俺はテレビのスイッチを入れる。もしかしたら今日のニュースで空を飛ぶ顔のことをやっているかも知れない。  結局、ニュースは芸能人の結婚ネタとか、年明けの帰省ラッシュの映像とか、そんなものしかやってなかった。今日は1月3日だ。田舎から都内へ帰ってくる人が多いのだろう。正月はこの足立区は人気が少なかった。コンビニもドラッグストアも空いていた。  お母さんが台所から俺を呼んだ。豆腐を買い忘れたんだそうだ。今日は湯豆腐だというのに豆腐を買い忘れる神経が分からない。買ったつもりだったんだというが買い物袋に入れる時に確認しなかったんだろうか。俺は一旦、外に出て、また顔が飛んでいるのを見たらどうしようと臆病になった。眉間に皺を寄せて考えてから豆腐はコンビニで買って来てもいいかお母さんに訊いた。コンビニなら家のはす向かいだ。さっと行ってさっと帰ってくればいい。だがお母さんは豆腐には拘りがあるみたいで、どうしても地元の豆腐屋のものでないと嫌だと言う。
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