飛ぶ頭部

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 俺は友達はいるが正月にわざわざ会うまでの仲がいい奴はいない。それに部活もあって無いかごときの弓道部なので冬休みは活動していない。だから、この悩みを共有できる奴が思い浮かばないのが正直なところだ。ライン友達はいるから画像を撮っておけば送ることが出来たか。そうだ、写真か。いいことを思いついた。写真か動画を撮ってテレビ局に送れば一躍有名になるかもしれない。俺は明日、起きたら早速スマホを持って顔が浮かんでいたところに行こうと思った。  次の日に自室の窓から外を見ると快晴だった。でも相変わらす風が強くて居間に行くと部屋の窓をカタカタ揺らしていた。俺はスマホを持って玄関から外に出た。昨日と同じダウンジャケットだ。今年はアウターはこれ一枚で過ごそうと思っている。紺色のブランド品だ。そうだ。これを買ったのは彼女が出来ると仮定していたんだった。初もうでに彼女と行きたいと思っていたからだが結局は無理だった。やはり待っているだけじゃダメなのか。でも好きな子が今はいない。  昨日、顔を発見した場所に着く。空を見上げると、やはり顔は浮かんでいた。心なしか昨日より大きく見える。彫りの深いイケメンが俺をガン見している。何か言いたいことがあるんだろうか。バケモノは口を開きかけて閉ざした。俺はスマホを空に向けるとシャッターを押した。ついでに動画に切り替えて撮影をする。よし、上手くいったぞ。これをテレビ局に送ろう。正月のトップニュースになるかな。
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