飛ぶ頭部

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 空に浮かぶ顔を撮影したことで少し心丈夫になった。これなら誰に説明しても納得してくれるだろう。ニュースキャスターが驚く顔を想像したら可笑しくなる。その時、顔がグングンと近づいて来て、俺の目の前で笑った。そして表情を変えてから「それを捨てろ、さもないとお前を殺すぞ」と脅す。殺されたら違う意味で有名になる。俺はスマホを放り投げて両手を上にあげた。バケモノはそれで納得したのか、また空の上に飛んで行って空中にプカプカ浮かんでいた。  俺はじりじりと後退りした。あいつ喋った。喋りやがった。俺を殺すと間違いなく言った。誰か誰でもいいから、ここに来て一緒に空を見てくれ。だが車が後ろを通るだけで人は居ない。近所の家に行って人を呼ぶか。あそこに浮かんでるものを見て下さい。そう言ってみるか。  右手には大きなマンションがある。確か数部屋の間取りになっているファミリータイプのマンションだ。今の時間なら大人の人がいるだろう。正月休みで子供もいるか。子供があんなもん見たら泣きわめくに違いない。俺はそう考えると人を呼ぶのを躊躇した。子供を怖がらせたらいけない。
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