飛ぶ頭部

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 俺は家に帰ってお父さんに事情を話した。空に変なものが浮いてるんだ。と人間の頭部で変な顔が飛んでることは言わなかった。お父さんはいぶかしげな顔をして鳥か飛行機だろうと言った。いや、いやそうじゃないんだよ。俺は手を左右に振って項垂れた。  お昼は正直に言って食べたのか食べなかったのか分からないくらい味がしなかった。考え事をしていたからだろう。空飛ぶバケモノはいったい何なんだ?何時まで浮遊を続けるんだ?幽霊なのか、それとも妖怪なのか。謎だらけだ。それに今日スマホを側溝に捨ててしまった。明日スマホを買いにいかなくてはならない。年末に本屋で仕分けのバイトしたお金とお年玉が無くなってしまう。まったく、とんだ災難だ。  その日は変に気が高ぶって眠れなかった。1階の薬箱には、お父さんが飲んでいる睡眠薬がある。ちょっと貰って飲んでみようか。空飛ぶ顔のことを一晩も考えているのは嫌だ。俺は階段を音をたてないように降りて薬箱を開ける。これは弱い薬だよとお父さんが教えてくれたものを銀色のシートからプチっと出してミネラルウオーターで胃に流し込む。直ぐに薬が効くとは限らないのでテレビを点けてお笑い番組を見る。元旦からずっとお笑いばかりだ。  俺はそのまま炬燵で眠ってしまった。テレビも点けっぱなしだ。弱い睡眠薬が普段、薬を飲まない身体に効いてしまったらしい。足が熱くて目を覚ました。壁に掛けてある時計を見ると午前2時を回っていた。俺は炬燵のスイッチを切ってテレビを消すと2階に上る。自室に行き布団にスライディングする。カーテンが少し開いていた。わざわざ閉めるのもかったるいのでそのままにする。その時ビックリした。ガラス窓には、まるで火の玉みたになものが映っていたからだ。
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