飛ぶ頭部

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 んん、何だ?俺は起き上がってカーテンを開ける。例の顔が光ってチカチカと輝きながら飛んでいた。なんだよ!あれ!俺はふつふつと怒りが湧いて来た。 「おっさん、何してんだよ」  怒鳴り付けると光る顔はにんまり笑っているように見える。笑っている場合か!だが俺も口角があがってしまった。昼間は殺すぞと驚かされたが、光るなんてふざけすぎている。怖いを通り過ぎて笑える領域に入ってしまった。  俺はまた布団に滑り込むとクックッと笑った。明日も空に浮かんでいたら石でも投げてやろう。それくらいしてやらないとスマホを失くした恨みは晴らせない。カーテンの隙間からはバケモノが光って浮遊しているのが分かる。昼も光っていたのだろうか。明るかったから気が付かなかっただけで電飾は顔に付いていたのだろうか。なんでチカチカ光るんだ。ちくしょう笑える。  それから俺はもう一度ぐっすりと寝直した。気が付くともう外は明るいようでカーテンの隙間から日差しが差し込んでいた。1階に行きインスタントコーヒーを淹れる。炬燵に足を突っ込むと、お母さんが急須にお茶を注いで目の前に座った。そして「昨日はここでテレビを遅くまで見てたでしょう」と言ってきた。俺はうんと頷いて眠れなかったことを白状した。睡眠薬を飲んだことも言った。 「今日も眠れなかったら言いなさい。薬局に不眠の安い漢方薬が売っているの。お父さんの薬じゃ強すぎるでしょ」  俺は反省した。勝手に人の薬を飲んだらよくないな。だから昨日は寝ぼけて顔が光るのを見てしまったのかもしれない。よし、今日の昼間もバケモノがいるか確認して来よう。スマホも買いに行かなくてはならない。
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