四大精霊

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四大精霊

 湊と光瑠が転送された時間と同刻の午前10時半。  レティアは心地の良い暖かさで、美しく豊かな森に転送されていた。   「綺麗なところ……探索してみよっと……」  レティアは全身がウズウズするのを感じていた。  レティアはスキップをしながら森の中へと入っていく。  森の中には肉食動物は存在せず、草食動物が伸び伸びと生活していた。 「みんな楽しそうに暮らしているなぁ……!」  レティアは辺りを見渡しながら呟いた。  所々に球体のようなものが飛んでおり、この物体はなんだろうとレティアは疑問に思う。  レティアは好奇心でいっぱいになった少女の様に球体に触れてみる。 「くすぐったいよぉ……」  球体から声が聞こえた気がした。 「何か言った……?」  レティアは球体に話しかける。第三者から見たら変人に思われる行動だ。 「……」 「気のせいだったのかなぁ……」  レティアは残念な気持ちになり、項垂れてしまった。  レティアは気持ちをすぐ切り替えて、積極的に球体に触れ始めた。 「きゃー!」 「やめて!」 「ひゃーぁ!」  球体に触れるたびに、声が聞こえてくる。レティアは楽しくなってきて、球体を追い掛けてまでも触れる様になった。 「これ楽しい!」  レティアのテンションは最高長に達していた。  しばらくの間、球体に触ることを繰り返していたら、球体はレティアに敵意はないと判断したのか本来の姿を現してくれた。  手になるくらいの大きさで、人の様な姿をしており、背中に羽がついている。  まさしく妖精だ。ここは妖精が住う森みたいだ。 「可愛い!!」  レティアは子供の様な笑顔を見せる。  レティアは妖精を手の上に乗せて、頬を伸ばしたりして遊ぶ。 「くすぐったいよぉ……!」 「だって可愛いんだもん!」  レティアはここに来てから一回も笑顔を絶やしていなかった。  レティアは妖精達に懐かれたみたいで、数十匹、いや数百匹の妖精に囲まれていた。 「ねぇねぇ、お姉ちゃんどこから来たの?」  妖精の男の子に話しかけられた。 「外の世界からかな……」 「外の世界か……いいなぁ……どんなところ?」    困った質問をされた。まだ異世界に召喚されてから一回も王宮の外に出ていないので、どう答えたら良いか分からなかった……  レティアはこの状況に適しているであろう言葉を頭の中で探し、絞り出した。   「私と同じような姿の人達が住んでいる世界だよ!」  納得してくれるかは分からないが、これが一番いい答えだと思っている。 「そっか……行ってみたいなぁ……」  絞り出した言葉は正解だったみたいで、妖精の男の子は興味を持ってくれた様だ。  レティアは胸を撫で下ろした。 「行ってみたいのか……方法を探してみるね……」 「ありがとう!」  妖精の男の子は満足そうに顔を綻ばせていた。  レティアは肩残りがほぐれたような気持ちになる。   「お姉ちゃん! 今から僕たちの四人の王様のところに案内するね!」  最初に話しかけてきた妖精の男の子がそんなことを言い出した。 「王様……?」 「うん! そうだよ! こっちに来て!」  レティアは妖精の男の子の後方に付いていき、森の奥深くに進んでいく。  歩き始めてから、十五分くらい経って全長が三十メートルくらいある一本の大樹の前に到着した。  この大樹の周りには樹は一切存在せずに孤立っており、この森のどんな樹よりも濃いオーラを放っていて存在感がある。  妖精の男の子は大樹に右手を触れ、なんらかの呪文を唱えた後、大樹の根本が扉の形に姿を変えた。  妖精の男の子の案内で扉の中に入っていく。 「ここから先には僕は進めないから、一人で行ってね!」 「分かった!」  レティアは妖精の男の子と別れて、奥に進む。  数秒後、どこからかは分からないが巨大な空間に光が差し込んでおり、幻想的な光景が広がっていた。   「わぁ……! きれい……!」  レティアはこの光景に心を揺り動かされていた。しばらくこの光景に見惚れていると声が聞こえてきた。 「こんにちは! レティアさん!」  レティアは声のする方に顔を向ける。  顔を向けた先の上空には鮮やかな青色の髪に同色の瞳をした少女がいた。 「あなたは誰……?」 「私は四大精霊の一人で、魔法四元素の水を象徴しているウンディーネと申します」  四大精霊と言う言葉は聞いた事があった。  精霊は実体を持たないと記憶していたのに目の前には人の形をした精霊がいる。 「精霊は実体を持っていないのでは無かったの……?」 「レティアさんの言っていることは正解です。今、私は魔法を使って人型に見える様にしています。ですので実体はありません」 「やっぱり……」 「今日はレティアさんにお願いがあってここに招待しました」 「お願い?」 「はい! 私達はマスターの魔力を取り入れる事で実体を持つ事ができる様になります。ですのでレティアさんに魔力を供給していただきたくここに招待させていただきました」 「私がマスター……?」 「はい! レティアさんには私達のマスターになるのにふさわしい器の持ち主です」 「そうなんだ……私ができる事ならなんでもするよ!」 「ありがとうございます! これで契約は完了しました。よろしくお願いします」  妖精の男の子は確か、王様は四人いると言っていたはずだ。  今、レティアの目の前にいるのは一人なので残りの三人も紹介してほしいと思った。   「よろしく! 他の三人も紹介して!」 「分かりました! マイマスター! 今から呼びたいと思います!」  ウンディーネが手を叩くとどこから現れたのかは分からないが三人の精霊が姿を見せる。  一番右には赤色の髪に同色の瞳をした少年が、その隣には緑色の髪に同色の瞳をした少女が、ウンディーネのすぐ右には茶色の髪に同色の瞳をした少年がいた。  三人はそれぞれ自己紹介を始める。 「俺は四大精霊の一人で、魔法四元素の火を象徴しているサラマンダーだ! よろしく!」 「私は四大精霊の一人で、魔法四元素の風を象徴しているシルフ! よろしくね!」 「僕は四大精霊の一人で、魔法四元素の土を象徴しているノームだよ! よろしくね!」 「よろしくお願いね!」  今この瞬間、四大精霊がここに集結した。  実際に対面してみるとここにくる前にあってきた妖精たちとは何かが違うと感じている。  これからレティアの中にある魔力を四大精霊に分け与える儀式が始まるようだ。  四大精霊とレティアは手を繋ぎ、円を作る。  儀式が始まって、レティアは体から魔力が抜けているのを感じていた。  だんだんと体の力が抜けていき、レティアはその場に座り込んでしまう。   「本当にありがとうございます! レティアさん! おかげで実体を持つことができる様になりました」 「どういたしまして……少しだけ休憩させて……」 「体力が回復なさるまでゆっくりなさってください」  レティアはウンディーネの言葉に甘え、大樹の中の広い空間の真ん中で仰向けになって、目を閉じた。  この広い空間の真ん中に差し込む光がレティアを照らすが、そんなことには全く動じずレティアはぐっすりと眠った。  寝始めてから三時間くらい経った時に誰かに体を揺すられていたので、目を開けた。    
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