古の日月厄災(いにしえのひつきやくさい)

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古の日月厄災(いにしえのひつきやくさい)

 百年前の十月十日。  太陽も沈み、月が顔を出していない頃、本来起きないであろう現象が王都の上空で起きていた。  空を二つに分けた右側には太陽が出現しており、左側には月が存在していたのだ。  太陽の下には朝の龍白夜の力を使い、白夜の龍剣士と言う二つ名を持つ、深緑色の瞳でベージュブラウンの髪。  落ち着いた体型で、女装すると男性だと分からなくほどの美貌。  前髪を瞳にかかるくらいまで垂らしており、白色ベースの服に白色マントを羽織った男性がいた。  月の下には夜の龍極夜の力を使い、極夜の龍剣士と言う二つ名を持つ、コバルトブルーの瞳にストレートブラック髪。  スラっとした体型で、女性と間違えられそうな容姿。  さらに前髪を左右に分けており、黒色ベースの服に黒色のマントを羽織った男性がいた。  二人は価値観の違いによって、対立をしてしまったのだ。 「なぜお前は人に害をなすのだ!」 「人なんて上に立つものがいないと統率が取れない下等生物だからだよ!」 「お前も人ではないのか!」 「まだそんなことを言ってるのかぁ!? お前は!」 「なんだと!」 「こんな力があるのに人と呼べる訳ないだろうガァ!!」  二人は人間のあり方で揉めているようだ。白夜の龍剣士は人と言うものは協力し合うことで成長できると考えているが、極夜の龍剣士は上に立つものがいないと統率が取れないと考えている。  これが戦いを始めたきっかけだった。 「お前は甘いんだよ!! 人は協力なんてできない!! 自我を持っているからなぁ!!」 「そんなことはない!! わたしたちはずっと協力してやってきたじゃないか!!」 「俺からしたらそんな気はさらさらなかったけどなぁ!! ただ利用をしていただけだ!!」 「……なんだと!!」 「今頃気付いたのか!! お人好しめが!!」  白夜の龍剣士は利用されていたことに全く気づかなかったのだ。  白夜の龍剣士は肩を落とした。 「俺の邪魔をするならここでお前を殺す!!」  極夜の龍剣士は口を歪める。 「お前は私が止める!!」  白夜の龍剣士は落ち着いた低い声を発する。 「やれるもんならやってみろやぁ!!」  二人は同時に接近を開始する。  白色の剣と黒色の剣がぶつかる。王都を震えさせるほどの衝撃があり、剣と剣の間に火花が散っている。  二人の力は互角でどっちも引かない。 「目を覚ませ!!」 「やかましい!!」  白夜の龍剣士が期待を込めて放った言葉は極夜の龍剣士には届かなかった。  二人は二メートルほど距離を取る。  白夜の龍剣士は愛剣に太陽の力を込める。  目を開ける事ができないほどの光が剣から発生している。  周りの気温は五十度くらいまで上がっている。  極夜の龍剣士は愛剣に月の力を込める。  こちらも目を開ける事ができないほどの光が剣から発生している。  周りの気温はマイナス五十度くらいまで下がっている。  この日は大陸を二つに分断して、体が焼けるほど熱いところと体が凍えるほど寒いところが同時に存在して、死者が出るほどの社会現象になった。   「ハァァァ!!」 「オラァァァ!!」  二人は叫び声をあげながら、太陽の力と月の力を吸収した剣をぶつける。  二つの剣がぶつかったことによって、世界中に一千万人以上が死ぬほどの大地震が起こった。  一番被害が大きかったのは、王都で特殊な魔法結界が貼られている王宮はヒビが入る程度ですんだが、王都の八割くらいの建物は崩壊した。  二人は戦闘に集中していたので、世界が崩壊し始めていることに全く気付かなかった。  二人の戦いは熾烈を極めて行く。  二人の剣がぶつかるたびに世界のどこかで建物が破壊されていく。 「さすがだな!!」 「お前もな!!」 「だが次の攻撃で決める!!」 「俺もだ!!」  二人は力を限界まで解放する。  限界まで解放をしたことによって、予想外の事態になってしまう。  白夜の龍剣士と極夜の龍剣士の姿がドラゴンへと変貌を始めたのだ。 「うわぁぁぁ!!——ガルァガァァァ!!」  二人は肺が締め付けられて、息が苦しくなるのを感じている。  人間の声が次第にドラゴンの鳴き声へと変わっていく。  二人はついにドラゴンになってしまった。  二体のドラゴンの外観は白色の鱗で覆われており、四本の足。  長い尻尾に胴体の半分くらいの大きさがある立派な翼が生えているドラゴン。  黒色の鱗で覆われており、四本の足。  長い尻尾に胴体の半分くらいの大きさがある立派な翼を生やしたドラゴン。  その姿はまさしく朝と夜を象徴する色をしている。  二体のドラゴンは口を開け、ブレスを溜め始める。  大気が震える。  この二つのブレスが当たったらこの世界は跡形もなく消え去るだろう。  二体のドラゴンのブレスが放たれた。 「四大精霊の力解放!! 魔法結界!!」  ブレスは確実に直撃すると思われたが、直撃はしなかった。  二つのブレスの真ん中に黄金の精霊魔導師の二つ名を持つ、鮮やかな赤色の瞳で、金色の長髪。  モデルのような体型で美貌が眩しく輝いている。  前髪は瞳にかかるくらいの長さで、後ろでは蝶々のようなリボンで一つ結びにしている。さらに高価そうな赤色の服を着ている女性が結界を張ってブレスを止めていた。 「これ以上はあなたたちの好きにはさせない!!」  黄金の精霊魔導師は鋭い声で叫んだ。 「ヤァァァァァァ!!」  黄金の精霊魔導師は二体のドラゴンをブラスを押し戻していく。   「ガァルラァガァァァァァァ!!」  二体のドラゴンも咆哮を上げ、必死に抵抗する。  ブレスは二体のドラゴンの方に押し戻されていき、ブレスが体に直撃する。 「ガァルルガァァァァァ!!」  二体のドラゴンは空気が張り裂けるような悲鳴を上げる。 「禁術!! サクリファイス発動!!」  二体のドラゴンがのけぞったのを確認すると黄金の精霊魔導師は封印魔法を発動する。  この封印魔法は自分の体を犠牲にすることでどんな者でも確実に封印することができる。  黄金の精霊魔導師と二体のドラゴンの体は次第に薄くなっていき、王宮の神殿に封印されたのだった。  ***  王宮の地下空間で、黄色い瞳に青色の長髪。  身長は147センチくらいで、幼さを残す容姿。さらに左側の前髪を耳にかけた少女が五歳くらいの時にお婆ちゃんに教えてもらった古の日月厄災のことをふと思い出していた。          
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