召喚日の朝

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召喚日の朝

 2025年、7月15日の午前7時。 「はぁ……学校行きたくないな……」  深緑色の瞳でベージュブラウンの髪。  落ち着いた体型で、女装すると男の子だと分からなくなるほどの美男子。  瞳にかかるくらいまで前髪を垂らしており、白色ベースの服を着ている男の子が鏡の前で呟く……  俺が通う学校の名前は須賀咲第一高等学校(すがさきだいいちこうとうがっこう)でお金持ちが通う学校だ。  世間的にはエリート学校とも言われている。  この学校のコンセプトは自由なので、服装の決まりはなく私服で登校しているのだ。  俺は昔から白色が好きなので、白色の服を着ている。  学校に行く準備ができたので、朝食を取るためにバックを持ってリビングに向かう。   「おはよう、みなと」 「おはよう、母さん」  そう俺の名前は――市ヶ谷湊(いちがやみなと)と言う。  俺が生まれた家は裕福ではなかったので、普通一般家庭でも食べれるようなの朝食が出てくる。  俺は昔からそこそこ頭がよく、何となく受けた学校にも受かってしまった。  そんな軽い気持ちで入学したことが失敗だった。辞めたいくらいに……  辞めたいと思っていても父さんや母さんが必死に働いて通わせてくれている事は分かっているので、できるだけ休まずに通うことにしている。 「いただきます!」  俺は母さんと一緒に食事を取る。  今日の朝食はご飯、味噌汁、魚料理である。  母さんは俺が家を出たら、すぐに仕事へと向かう。   忙しいはずなのに毎日、食事を作ってくれているので、感謝をしている。 「ごちそうさま!」  俺は朝食を終え、キッチンに食器を持っていく。そしてお手洗いと歯磨きを済ませて学校に向かう。 「いってらっしゃい」 「行ってきます」  俺は嫌な学校に向かった。  ***  2025年、7月15日の午前5時にコバルトブルーの瞳にストレートブラックの髪。  スラっとした体型で、女の子と間違えられそうな容姿。  前髪を左右に分けており、黒色ベースの服を着ている男の子——天沢光瑠(あまさわひかる)が勉強を行なっていた。  光瑠は天沢グループの跡取り息子である。  天沢グループとは大手のゲームメーカーであるネラスとそのグループ会社のことを指している。  そんな家に跡取り息子として生まれた光瑠は幼い頃から英才教育を受けていた。  その成果があってか学校ではずっと首席を取っていたのだが、半年前に女の子が編入してきたことによって主席を取れなくなってしまったのだ。 「……イライラするなぁ!」  光瑠は鉛筆に必要以上の力をかけて折ってしまった。  首席を取れなくなってから家族の態度も一変し、期待をされなくなったのだ。  それに学校では首席の者は優遇される。  学校の授業を出なくて良くなったり、学校のルールを決める権利も得ることができる。  次席になった途端にそれは無くなってしまった。  光瑠の表情は首、腕が見た目にも分るほどこわばっていた。   「……全然頭に入らないなぁ! 今日は止めよ!」    光瑠は教科書を勢いよく閉じる。  時間を確認してみるといつの間にか午前7時を回っていた。 「準備をしないといけないなぁ……」  光瑠は着替えをして、リビングにおりていく。  リビングの部屋のドアを開けて中に入っていくと、誰もいなかった。  両親はもう仕事に出かけているようだ。   「真琴! 真琴はいるか!」 「御用は何でしょか? お坊っちゃま」 「ご飯を用意してくれ!」 「承知しました」  美琴はこの家のメイドだ。  美琴さんは小さい頃から光瑠の世話をしてくれている。  数分後、テーブルの上に豪華な料理が並べられる。  朝食にしては量が多いと思うが光瑠は食べ始めた。  光瑠はなんとか朝食を完食した。   「真琴、ありがとう」 「当たり前のことをしたまでです」  光瑠は学校の支度をして、家を出ていく。  今日も美琴が車で学校まで送ってくれるみたいだ。  ***  2025年、7月15日の午前7時半にゆっくりと起きたのは鮮やかな赤色の瞳で、金色の長髪。  モデルのような体型で美貌がまぶしく輝いている。  前髪は目にかかるくらいの長さで、後ろでは蝶々のようなリボンで一つ結びにしている女の子——レティア=ローゼンハイツだ。  レティアは半年前に須賀咲第一高等学校に父親の都合で、編入した。  レティアは父親がロシア人で母親が日本人のハーフである。  父親はネット通販ウシャルドの経営をやっており、拠点を移すことがよくあるのだ。  父親の頑張りによってウシャルドは大手企業へ成長した。  今では年商、一兆円以上の売り上げを誇っている。  レティアは赤色が好きで、今日も赤色の服を着ている。  私服は全部で十着以上存在しているので、何を着ようか今日も迷ってしまった。  なんとか服を決めて、食事に向かう。 「おはようございます、みよさん」 「おはようございます、お嬢様」 「いつもご苦労様です」 「いえいえ、これが仕事ですので」  この家で働いている美葉さんに声をかけた。  この家では掃除係や食事係などの色々な家事仕事をお手伝いさんに任せている。  美葉さんもその一人で合計で十人の人が家で働いている。  レティアは美葉さんと別れて、父親と母親が待つ部屋に向かう。  朝食は父親と母親と摂るのが日課だ。  レティアのきょうだいに兄がいるのだが、兄は今海外に行っていて家にはいない。  レティアは父親と母親が待つ部屋のドアの前に着いた。そしてドアを三回叩く。  部屋の中から声が聞こえたので、中に入っていく。 「おはよう。お父様、お母様」  父親は甘いが、母親が礼儀に厳しかったので、挨拶をしっかりとする。 「おはよう。レティア」  母親と父親が明るい表情で返事を返してくれた。   「それでは食事にしましょうか。レティアここに座って」 「はい!」  母親の指示でレティアは席に着席する。 「いただきます」  レティアたちは食事係の愛海さんに感謝の気持ちを込めて朝食を食べ始めた。   「前回のテストも一位だったみたいだな!」 「はい! お父様!」 「レティアは素晴らしいな!」 「お父様、ありがとう!」  レティアはくすぐったいような軽やかな気持ちになった。 「レティア、順位は絶対に落としてはダメですよ」 「……はい……お母様」  父親と違って母親は厳しい。レティアはさっきとは打って変わって少しげんなりする。  食事を終え、レティアは学校に向かうことにした。  学校の支度は昨日のうちに終わらせている。  これも母親の教えだ。 「行ってきます!」 「いってらっしゃい!」  レティアは二人に見送られて、学校に登校し始めた。  車で登校してもいいのだが母親の許可がなかなか下りないので歩いていく。
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