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 よそ見をしながら歩いていた僕は、前から歩いてくる人に気が付かなかった。思い切りぶつかってしまって、後ろによろけたら丁度僕の後ろにいた人に支えられてしまった。 「ごめんなさい」と振り返るとそこに居たのは、どちらかと言えば強面のどちらかと言えばイケメンがいて、大丈夫かいなんて言葉より「気ぃつけろや」と睨みをきかせて、どうやら僕ではなくぶつかった相手を威嚇していた。  振り返った拍子に抱えていたプリントの束がバラバラと落ち、アワアワとしている間に足跡だらけになってしまった。  慌てて拾い集めたけど、かなりの数が汚れてしまった。 「悪い、大丈夫か」とぶつかった人までも拾ってくれて、もちろん僕を支えてくれた人も「ちまいのに持たせすぎだろ」と呆れながら集めてくれた。  どう見ても三年生なのに申し訳なくなる。 「ありがとうございます」とお礼を言えば何処に運ぶんだと聞かれ、仕方ねぇなぁと半分以上持ってくれる。  どちらの先輩も背が高く、もうぶつかった人なのか後ろで支えてくれた人なのか分からないけど、手伝ってくれるみたいだ。 「それにしても、小さいな」  社会科準備室にプリントを届ける間、一年の何組だ?名前は?なんて話してる内に、後ろで支えてくれた人なのだと気がついた。助けてくれた上に運ぶのを手伝ってくれて、優しい人だなと思う。 「ウチはみんな大きいんですけど、ぼ・・・んと、俺だけ小さいんです」  小さい、なんて男に向かって言う言葉じゃないと思った。事実だけど。160cmしかないけど。なんてことを思ったのは、準備室にプリントを届け終わった後、お礼として紙パックのジュースを奢りますと自販機スペースで財布を出した時だった。
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