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「そのものすごく芸術的な髪形は、俺を笑わせるためか?」  突然聞こえた声に慌てて振り返れば、笑うのを我慢してるような顔をして神前さんが僕を見てる。  そういえば昨日は髪を乾かさないで寝てしまったし、今朝は鏡を見る暇が無かった。  普段そんなに寝癖のつく髪質じゃないから気が付かなかった。  バタバタと頭を手をやれば「そこまで酷くはないよ」とくすくす笑って髪を梳いてくれる神前さんに「恥ずかしいよ」と言えば「可愛いからこのままでも良いけど」と、コンビニに寄ってムースか何か買おうと言われる。  そのまま自然な感じで手を取られて・・・神前さんの右手で僕の右手を握られて、先を歩く神前さんの後をついて行く。なんでかなって思って神前さんを観察してみると、神前さんは右肩から斜め掛けにかけたショルダーバッグ?なんて言うのかわからないけど、それが左側にきてて、僕もリュックの他に左手に用もないのに財布を握っていた。  でも、神前さんの広い背中とか実はキレイに刈られた項とか、もうブレザーも着てないからがっしりした腰まわりとか、僕なんかとは違う『男』の身体が綺麗で。 「のあ゛っ」  思わず、とか、つい、とかそんな感じで触ってしまった神前さんの背中は、筋肉どころか必要な脂肪すら付いていない僕の体と比べると、触り心地が良かった。  無意識で触ったから、一言声をかけるとかしなかった。神前さんを驚かせてしまった。 「変な声」と笑えば、にゃろ と頭を抱えられる。髪をぐしゃぐしゃにされて、やだやめてと騒げばギュッと抱きしめられる。 「そうやって、自然に笑える事が増えるといいな」  そっと顔をあげれば、なんだか幸せそうな顔で僕を見てる神前さんの顔がフッと近づいて、髪につく。これはもしかして、髪の毛にキスをされたのかと真っ赤になるけど、実は神前さんはその前から顔が赤くて、朝早くから男子高校生が二人で顔を赤くしていて、それはそれで恥ずかしい。  もうすぐ駅を出るという所で、電車がついたのか同じ制服の人が増えてくる。  神前さんは、それが当たり前だとでも言うように僕の手を引いたまま、コンビニへと向かう。  相変わらず僕の右手と神前さんの右手は繋がれたままで、でも手を繋ぐっていうより右手同士だから引かれてると言った方が正しいのかもしれない。  それでも、コンビニで必要なもの・・・お昼ご飯とか僕の髪を何とかするための何かを買って、今度はちゃんと手を繋いで学校へ向かう。
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