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「ましまぁ、眞島 優也はいるかぁ?」
僕、眞島優也がこの高校に通いだして早数ヶ月。あと少しで夏休みというこの時期になると、もう既にクラスのヒラエルキーは出来てるしある程度のグループみたいなのも出来てる。
この春、この辺に越してきた僕は中学からの知り合いも全くいないまま今でも一人だ。その方が気が楽なのは楽だけど、ちょっと寂しい。
でも、小さい時から転勤を繰り返してきた父に付いて回っていたので、日本全国 北は北海道旭川市から南は沖縄県那覇市まで二、三年おきに引越ししてたので仲の良い友達なんかは出来たことがなかった。
七歳年上の姉は大学に進学する時に一人暮らしを初めたし、五歳年上の兄は二年前に家を出た。二人とも同じ地域で別々に暮らしていたけど、この度めでたく父が転職し姉と兄のいる地域で働く事が決まった。
いい機会だからと家を買い、久しぶりに家族五人で暮らし始めて二ヶ月。
昔みたいに笑顔溢れる楽しい生活が待っていると思ってた。
「はい」
笑顔で返事をしたつもりで、僕を呼び出した先生の所へ急ぐと、ほんの少しだけ悲しそうな顔をした先生がいて。
「先生?」
ほんの一瞬だけ悲しそうな顔をした先生がなんでもないよと元の顔に戻る。
もうずっと。僕が笑うとみんな悲しそうな顔をする。
笑うなと言われているみたいで、どんどん笑顔が下手くそになっていく気がする。
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