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 びっくりして手を離すと、あきちゃんがいて、それこそ神前さんが殴られるんじゃないかと思うほど怖い顔をしていた。 「連絡貰って助かったわ。ありがとう。でも、それとこれとは全く別よ。私の可愛い弟から離れなさい!どこの馬の骨か分からないような人には渡さないんだから!」  ひと息で言い切ったあきちゃんが、僕の手を取って「お世話様!」と神前さんを怒鳴りつけて踵を返した。  いつの間にか連絡先を交換してたのかな。僕だってまだなのに。・・・っていうか。 「あきちゃん、離して!」  なんとかあきちゃんの手を振り払って、来た道を戻る。神前さんに挨拶もしないで帰るのはいやだ。  元々あまりない体力を駆使して神前さんに駆け寄る。 「神前さん!あの・・・今日はありがとう。えっと・・・あの・・・」 「うん、明日。また明日な。朝八時にここで待ってるから」  連絡が出来ないことやこのまま帰りたくない事も全部わかってくれて、欲しい言葉をくれる。  神前さんの傍はやっぱり安心する。 「うん・・・はい。明日。八時にここで」  そう言って頭を下げれば、ポフっと温かい手が降ってくる。  神前さんがそうやって欲しいものをくれて、僕は・・・神前さんに返せるかな。 「あきちゃん、待ってるぞ?早く帰れ」  柔らかく笑って、神前さんが手を振る。  僕も笑って手を振ったけど、上手に笑えたかな。笑えてるといいな。  そう思いながらさっき手を振り払った場所で待っててくれるあきちゃんの元へ急ぐ僕は、少しして振り返った時神前さんが蹲ってて少し慌てた。 「心配しなくても、悶えてるだけよ。ほっときなさい」  あきちゃんに言われて、まだ余り人との関わりが分かってない僕よりはあきちゃんの方がわかってる気がして、女の人とは思えない力で手を引かれて家路を急ぐ。  まだそんなに遅い時間じゃないけど、今朝のこともあるし、早く帰って母さんと話しなさいとあきちゃんは言う。  僕から話す事なんてないと言おうとして、僕はお母さんに何一つ言ったことが無かったと思い至る。  全部一遍に話す事は出来ないけど、部屋に入らないで欲しいと言おう。  僕だって年頃の男なんだから、と部屋に入らないで。と。
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