3

20/20
前へ
/392ページ
次へ
「お母さん、あのね・・・」  夕食は肉じゃがだった。昔は好きだった、お母さんの味だ。  それがわからない事が申し訳ないと思う。  それも含めて部屋に入らないでと言えば、お母さんは「優也も高校生になったのよね。まだまだ小学生のような気がしてたのよ」とある程度譲歩してくれることを約束した。  多分、まだ蟠りはある。僕だって言えてない事があるし、お母さんにだって言いたいことがあると思う。  イヤだイヤだと逃げないで、ちゃんと話をしよう。  イヤな事に背中を向けないで、ちゃんと向き合おう。  そうやって、僕が壊した『家族』っていうやつをやり直そう。 「ま、どれが正解とかわかんねぇけどな」  相変わらず人の気配の薄い部屋だな、とこの家に住み始めて二回目?三回目かな。そのくらいな感じにひろちゃんが部屋にいる。  男兄弟で、お兄ちゃんのひろちゃんは僕がお母さんに言われていることを知りながら仕方ない事だと言う。 「男だとか女だとかじゃなくて、末っ子ってのはそんなもんだ」  璃穂は初めての子だから母さん付きっきりだったし、お前はチビで病気がちでこれまた母さん付きっきりだったし。俺だけが放置されっぱだわ。  初めて聞いた、ひろちゃんの気持ち。これでも寂しくて泣いた事だってあるんだぞ、と僕の頭をぐしゃぐしゃにする。 「お前だけが悪いなんて、誰も思ってねぇよ。それに、ウチだけの『家族像』ってやつを作ればいいんだよ。正解なんてないんだから」  人それぞれってことなんじゃねえの?と一言残して、あきちゃんに急かされてひろちゃんは部屋に戻った。  お母さんの過干渉が今に始まった事じゃないのは、本当に僕が末っ子だからなのかそうじゃないのか、男らしくっていうのを気にする意味とかまだなんにもわからないけど、僕がイヤだと思う事とお母さんがやめようと思ってくれる事が一緒だったら、嬉しい。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加