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けれど、反省なんか微塵もしていない。
ふたたび顔をあげ、わたしをじっと見つめる、その表情が言っている。
――まだまだ訊きたいことは山ほどある。あんたの本当の言葉が聞きたいんだ。
何なの、その態度は。
こういう男、大嫌い。
オレスゲエエ感丸出しで――いや、実際、この交通網もまだ未発達な西華大陸をそれだけ渡り歩いているのだとしたら、ジャーナリストとしてはちょっとすごいのかもしれないけど。
でも、それをあえて隠して、控えめにしておくのが、大人のたしなみってものでしょ。
だいたい、さっきの質問くらいで、わたしがうろたえるとでも思ったら大間違い。あの程度のことなら、さんざん陰口叩かれてきたんだから。
「わたくしに質問があるなら、正式な謁見を宮内省に申し込むことね。でも、わたくしに会いたいという人はたくさんいるから、あなたの番が回ってくるまで何年かかるかしらね」
「実に残念です、殿下」
口元に皮肉な笑みを浮かべ、視線はわたしから一ミリだって逸らそうとしない。
あの目。ジェットストーンみたいに真っ黒で硬質な光を放つ。あんな瞳は、今まで一度も見たことがない。
あの目に見つめられると、何だかひどく落ち着かない。体の奥から何かがざわざわと這い上ってくるみたい。
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