閑古鳥のなく島

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閑古鳥のなく島

瀬戸内海のとある島に、小さな刑務所がありました。高い塀の外は広い海、決して逃げることのできないその刑務所には、死刑囚ばかりが集められていました。 その刑務所には、少し前から一羽の閑古鳥が住み着いていました。閑古鳥は死刑囚達の頭上で毎日「ひーまーだー!ひーまーだー!」と鳴きます。 それを聞いた刑務官達は、このように話していました。 「まったく、本当に暇な刑務所だよ。死刑囚は世間から隔絶された島で死を待つのみ。すっかり生きる気力もなくして、まったく静かで平和なもんさ。」 そんなある日、この刑務所に新しい刑務官がやってきました。この島で初めての女性の刑務官です。所長は、みんなに新しい刑務官を紹介しました。 「彼女は島田ユマさん。アメリカ出身の帰国子女だ。英語も日本語も話せて、頭も良い、大変な才女でいらっしゃる。こんな暇な刑務所ではあるが、先日、アメリカの刑務所から極悪死刑囚が脱獄した事件はみんなも知っているだろう。万が一のことが起きぬよう、我々も彼女に知恵を借り、油断せぬようにしようではないか。」 施設の中に拍手が響きました。 そして、彼女の頭上にあの閑古鳥が飛んできて、大きな声で鳴きました。 「しーまーだー!しーまーだー!」 それを聞いて所長は言いました。 「なんと!あいつはずいぶん賢い閑古鳥だったんだな!彼女の名前を覚えてしまったじゃないか!」 次の日の朝、施設の隅で閑古鳥は首をちぎられて死んでいました。 「だれがこんなことを…。私がお墓を作ります。かわいそうに。」 新しい女性刑務官は、そう言って閑古鳥の死体を島の隅っこに埋めました。 埋め終わると、彼女は地面に向かって静かに言いました。 「ひさしぶり。あんたはほんとに賢い鳥だ。そして、この島の人間はバカばっかりだね。だれも英語が分からないし、そもそもあんたは閑古鳥じゃなくて九官鳥じゃないか。アメリカにいた頃、あんたはいつも私達の頭上であのように鳴いていた。He must die!She must die!ってね。でもね…」 彼女は地面にキスをして、ささやきました。 「You must die.(ユマだ)、私は、死なない」
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