等身大の自分

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ひとつ、またひとつと歩を進める、不安定な道の上。 石が、岩がごろごろと音をたてる。気を抜いたら、倒れてしまいそう。 息を大きく吸って、また息をはきながら、不安定な道を歩み続ける。 私は、自然の中を歩いたり、山を登ったりすることが大好き。 つまらない日常から、辛い毎日から、そんな日々から、逃げ出せるような気がするから。 とめどなく聞こえる、鳥のさえずり。私の周りを戯れる、虫の数々。 これが嫌いな人もいると思う。 でも私は、この空間にいるときだけ、本当の自分になれる。 つくった笑顔も、嘘を垂れ流すこの口も、この時だけはありのままの私。 ありのままでいられるって、ほんとに素敵なこと。 それまでの事なんて、どうでもよくなるくらいに。 一生懸命歩いて登った先には、これまでにない感動が待ってる。 その感動は、一度体験したら虜になってしまうほど。 もう夏なのに、まだ積もっている、雪。 もう夏なのに、まだ冷たく吹く、風。 きしきしと音を立てながら、ぶるっと震えながら、私は歩く。 まるで異世界に来たような感覚に陥る。 そして頂上まで登った時の、達成感。 朝早起きして御来光を見たときの、感動。 この前は、ペルセウス座流星群も見たっけ。 流れ星が、ひとつ、またひとつと流れる。 雲海も、たまらなくきれいだ。 次はどこに行こう、どこに登ろうかって、考えるのも楽しい。 ずっとずっと登り続けられたら、いいな。 そうだ、来年は―― ――…来年は、どこに行こうか。
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