「善いこと」は「悪いこと」だった?

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「少年の思った通り、あの少女が少年に対して『悪いね』を送ったのは本当の事だぞ」 本当なのか……期待に答えられなくてごめんな。俺も剣を使った実戦は初めてなんだ。 最初はこんなもんだろと思うし、良い感じの素人っぽさが出ていて俺は大変満足なんだがな………。他者の評価だと確かにそうなるわ。 「あー、でもね?。彼女送った『悪いね!』は1個だけなんだよ」 「は?、じゃあ後の9回送られた『悪いね!』は何があって送られて来たんだ?」 「あー、それは少年が剣で犬を切ろうとしたからだよ。つまり、残りの『悪いね!』を送ったのは犬だ!」 「え、なにそれ。平和的に解決出来なかったって事か?。それはなんかとても良い感じじゃないな。戦闘があるのは異世界では当たり前の事なんだし、これには何か深い訳が別にありそうだ」 「そう、さすが少年!『いいね!』x10。………少年の予想通り、このイベントには実は裏設定があって、あの犬は悪い奴ではない。あー、うんとね、そうそう、あの犬は野生の犬だけど人に危害を加える気は無かったんだ。先に手を出したのは少女って事。あの犬はただお腹を空かせた子供達のために木の実を探しに行った。だけど母犬ではない。困っている犬が居たら誰これ構わず助けたいと思う正義感の強い犬なんだ」 ………なんて良い話なんだ。 俺は思わず泣いてしまう。 そして犬に『いいね!』を10回送った。 あれ、なんか良い奴だなーと思った瞬間、『いいね!』を送ってしまったぞ!?。 「あー、いい忘れてた。少年が心の底から思った他者への評価は『いいね!』と『悪いね!』となって対象に付与される。つまりこれはどういう事か、もう説明は不要だな?」 なるほど…本当に変わった特殊能力だな。 俺の下した他者への評価が相手の運命に影響するとか…。 これは色々使えそうなだな……まあそれはさておき。 「だったら何故あの少女は傷だらけなんだ?。犬にちょっかいでもかけたのか?」 「あー、あの少女は盗賊ギルドに所属する密猟者だからな。野良犬でもそれなりに金になるのさ。 それに犬の方も彼女の服に染み付いている同族の血の匂いで危機感を感じ取ったんだろう。そしてそんな奴が手を出してきた暁には正当防衛として人間を襲うのは当たり前の話だ」 なるほど………たしかにこれじゃあ俺が悪い奴なのは間違いない。 『悪いね!』をたくさん犬から送られた理由についても、これで納得できた。
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