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否定されなかった。
それどころか、「おまえは間違っていない」と言われた気がした。
面と向かって言われたことはないけれど、誰もがオレを見ては、「おまえのせいで英美里は」という顔をした。
どうしてお父さんの言うことが聞けないのか。なぜ自ら道を踏み外そうとするのか。そう思っていることが見え見えだった。
ずっと前から気づいていた。姉貴以外の人間は、オレの存在そのものを疎んじている。そうとわかっていてなお現実から目を背け続けてきたオレは、とんでもないバカだということも。
いつか、誰かに認めてほしかった。
自由に生きていくことも、悪いことじゃないんだって。
何もかもを見透かされていたことが悔しくて、だけど少しだけ嬉しくも思えて。
正面から顔を見られることが恥ずかしくなって、男からそっと視線を外す。
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