バケモノノナマエ

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 *** 「……ほんと、悪ィ。気を使わせちまって」  順平と優の腐れ縁は、高校時代から始まっている。文系でメガネっ子、地味メンの順平と。イケメンで爽やかなスポーツマンタイプの優。正反対に見えるふたりに共通してしているのは、双方アニメや漫画のオタクということ。よって今日のように、レストランで好きな版権のお絵かきしたりネタを雑談したりする“オタク会”をするのはけして珍しくないのだが。  今日の優は、イケメンが台無しになるくらい目にクマをつくり、げっそりと青ざめている状態である。やはり、見目に反して繊細な彼は今回の事で相当応えていたらしい。 「いや、WEBで小説……それも群雄割拠のスターライツで書くってのはそういうことだってわかってたんだけどな。星つけられて評価されて、五ツ星にでもならない限り叩かれまくるってことはないとばかり……ほんとまさか、書いて間もない新人の時点でこうも叩かれるとは思ってもみなかったんだよな……」 「ああいう人達はとにかく標的を探してるだけだから、気にしちゃダメだよ。僕だって登録してすぐ叩かれたんだよ?」 「いや、お前は大賞かっさらって、意図せずにせよ星野愛良に喧嘩売っちまったからだろ。俺なんか、ランキングも圏外だし入選だって一回もないんだぞ?大賞どころか、優秀作品入りもしてないってのにさあ。正直、賞取ることがあったら叩かれるかもとは思ってたけど、その前にちろちろ火炙りにされようとは……」  落ち込んでいる彼を見ていると、心底申し訳ない気持ちになる。だから、彼の不興を買うのを承知で言ってみることにした。 「……僕との相互フォロー、外した方がいいんじゃない?……その、優が叩かれるの絶対……僕と表で仲良くしてたせいだし」  スターライツの格付けは裏掲示板の彼らの多数決・独断で決められるものだが。ある程度のルール付けはされているようで、そもそも掲示板に名前が出てくる作家そのものの数が限られていたりはする。圧倒的に、星が多い作家ほど人数が少ない。万単位で存在するであろう一ツ星作家の数を正確に把握している者はいないし、一ツ星は順平のような例外でもなければ滅多に注目されることもないのだ。  良く言えば叩かれず、悪く言えば見向きもされない。だからある意味、怖い思いをしないという意味では安全圏であったはずなのだけれど。それが順平、マルイタカヤと繋がったことで運悪く目立ち、彼の作品が“最初から粗探しをするつもり”の連中に読まれてしまい、槍玉に上げられる結果となってしまったのだ。  リアルで仲良しなのを、WEBでもそうする必要はなかったはずである。正直、順平としては後悔しきりであったのだが。 「やめろよ、確かにきっかけはそうだったかもだけど……お前が悪いことしたわけじゃないだろうが」  優は顔を上げ、きっぱりとそう言ってきた。
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