バケモノノナマエ

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バケモノノナマエ

 小説投稿SNS、スターライツ。  プロが別名でこっそり登録していたり、そうでなくてもプロ作家をガチで目指す者達が集う群雄割拠のこの小説サイトの特徴は、大きく分けて二つある。  一つは、多数のコンテストを絶え間なく開催していること。勿論賞金も出るし、ものによっては書籍化の打診が来ることもある。作家志望達にとってはまさに登竜門。プロもそうでない者にも平等にチャンスがある、というのが最大の魅力と言っていいだろう。  そしてもう一つの特徴は。サイト自体の仕様にはないのだが――このサイトが、裏の掲示板でひそかに登録作家達の“ランク付け”がされており、成果を上げたり人気が出た者から順に☆を与えられて評価を受けているというところだろうか。登録したての新人WEB作家は、一ツ星という扱い。それがコンテストで入選したり、ランキングに頻繁に載るようになることで裏の作者・読者達に評価され、少しずつ星を上げていくことになるのである。  その中でも、最高ランクの五ツ星で評価される作家は、何十万とも呼ばれる登録者の中でもたった五人しかない。彼らはアマチュア(?)でありながら新作を出すたびにランキングを掻っ攫い、コンテストに作品を出せば高い確率で十二分な成果を上げる。中には複数回、大賞を取る者もいるほどだし、既に書籍化している者もいる。いわば、スターライツ登録者達にとっては憧れの的と呼んでも差し支えない存在なのだ。  だからこそ、少々性格に難があったり、あるいは多少の横暴が許されてしまっている側面もあるので――少し前にスターライツに登録した新人である自分、社会人WEB作家である木戸野順平も苦労したクチであるのだが。 ――うう、あんまりこういう掲示板見るの嫌なんだけどなあ……どうしても気になっちゃう。  自宅の部屋にて。スターライツの裏掲示板を見て、順平はため息をついた。登録したてのしょっぱなに、どんな運が向いたのか短編コンテストで大賞を掻っ攫い、暫くの後別の長編コンテストで準大賞を取ってしまった順平は。今や、裏掲示板でも主に“悪い意味で”有名人であった。なんせ順平はスターライツの実情を一切知らずに登録してしまった一人であったからである。まさか裏で星をつけられて格付けされており、しかもその短編コンテストで、某五ツ星作家を知らず知らず倒してしまっていたなど完全に知る由もないことだったのだ。  当然、新人でありながら“配慮”が足らなかったとして、順平は裏の住人達からもその五ツ星作家とその信者からの大顰蹙を買うことになった。その作品の粗探しをされることは勿論のこと、順平が登録していた他のSNSまで大炎上してしまったのである。  その後、その五ツ星作家である“星野愛良”との真っ向勝負を受けて勝利したことで、どうにか面目を保ち、炎上状態もだいぶ落ち着いて来たのだが。残念ながら、裏掲示板の連中には嫉妬と欲に塗れた者も少なくない。ようは、登録している他のWEB作家を貶めてやるきっかけを、今や今やと待っている奴らもいるのだ。
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