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柊木さんが何とか帰そうとした佐々木さんと、結局三人で夕食を食べた。私が支度をしているあいだに持ち帰った荷物を片付けるのを手伝ってくれたから、なんだかんだ佐々木さんにいてもらわなかったら大変だったはずだ、と諭したけれど、それよりも早く二人きりになりたかったと小声で囁かれてしまえば、照れくさくて、でもそれ以上に嬉しくて何も言い返せない。
それでも佐々木さんは夕食の後素早く席を立ったから、やっぱり柊木さんのことをよくわかっているのだと思う。
後片付けを終わらせ、リビングのソファに並んで座った。
これまでここは雇主のスペースと思っていたから、考えてみれば座るのは初めてだ。
最初は少し離れていたけれど、柊木さんがぐいっと距離を詰めてきて腕を引かれたので、今私の頭は大きな肩に乗っている。
時々柔らかく頭を撫でてくれるのが気持ち良い。
「今日、泊まってく?」
「えっと……帰ります」
「えー?」
「お父さんに説明しないと」
時々前髪を梳きながら髪をくるくると弄んでいた柊木さんの手が、ぴたりと止まった。
「そっか。そうだよな」
「気まずいですか?」
「ううん。っていうか、俺から挨拶に行くよ」
「え?」
「多分、征さん気づいてるし」
「え!?」
「だから俺バレバレだったんだって。柚さん以外に」
叔父には何やかんやと口を挟まれたけれど、父には何も言われなかったから予想外だった。
父親に彼氏を紹介なんて今までしたことがないから、やたら気恥ずかしい。
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