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千穐楽なんて、満員御礼に決まっているんだから手に入れるのは大変だったはずだ。
子どもの頃、どの回を観に行くか相談していて「千穐楽はだめよ」と母に言われたのを思い出す。
「ありがとうございます。楽しみに、してます」
そう伝えると、柊木さんはふっと目元を緩めた。
「うん、こちらこそありがとう」
チケットを挟もうと手帳を取り出して。
ページを捲るとはらりと今日受け取った写真が目に止まった。
思わずぱたんと綴じたけれど、柊木さんの視線はずっと私の手元を追っていてーーー。
「あ、あの。私、柊木さんとお話ししたいことがあって」
「え、あ、うん。俺も」
お互いに黙って、奇妙な沈黙が続く。
ドキドキと自分の胸の音が聞こえてきて、ぎゅっと目を瞑ったところで、ふっと柊木さんが息を吐いた。
「公演の日、少し時間もらえる?終わってから」
「はい、もちろん」
「じゃあ、その時ね」
そう言われて、こくんと頷くので精一杯だった。
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