9.何度でもコールバック

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笑う隙間もないほどシリアスなストーリーに、休憩に入ったときには疲れ果てていて立ち上がる気力もなかった。 と同時に、怪我をしたシーンがどこだったのか、気付かないくらいでほっとする。素人目だからかもしれないけれど、演出が変わったなんてまったく思い至らなかった。 「悠真さん、いつにも増してすごくない!?」 「気合いが違うよね。やっぱり楽だから?」 「めっちゃくちゃ格好良かった!今日頑張ってチケット取って良かった!!」 「ほんとほんと!これ見逃したら一生後悔してた!」 興奮気味に語り合う女性たちが目の前を通り過ぎていく。 共演者の女優さんの名前を挙げながら、羨ましい!と連呼する彼女たちを見て、心臓がどくどくと音を立てている。 ーーーーーオムレツが好きで、突然強引になる、子どもみたいな一面を持ってるのに。 それは彼女たちには見せない姿だろう、と思うと自分の心に浮かんでくるのは喜びだ。 まるで独占欲のような。 私は心の中の悪を全然コントロール出来てないな、と内心溜息を吐くしかなかった。
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