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話しながら手は黙々と動かしていると、シャワーを浴びた柊木さんが出てきた。
何度か見ているはずなのに濡れた髪をがしがしと拭く姿を直視できず思わず目を逸らしてしまった。
「なにふたりで楽しく話してんの?」
「お前が全然片付けないから柚さんが手伝ってくれてるんだろ」
「…え、ごめん」
「いえ、むしろ勝手にやってすみません」
「いやいや!謝ることないから。有難いくらいだから」
「ほら、お前もさっさと片付けろ」
「はーい」
「あ、あと何やればいいですか?」
きょろきょろと楽屋を見回すと、隅で柊木さんが手招きした。
「これ差し入れなんだけど仕分けるの手伝ってくれる?食べ切れないやつはカンパニーに寄付しようと思ってて」
「え、これ全部ですか?!」
段ボールの中には乱雑に菓子箱が詰められていて、その周りにもバラバラの缶や箱が重なっている。
「そう。柚さんが食べたいやつは持って帰って後で食べよ」
柊木さんはけろりとそう言うけれど有名店の高級チョコレートや地方の銘菓など簡単には手に入らないもので溢れている。
「こんなに食べたら太っちゃいますよ」
「確かに。じゃあ厳選して持って帰ろ」
そう言ってまるで悪戯を企んだ子どものように笑うので、二人で吟味して、綺麗な缶に入ったチョコレートと焼き菓子を選んだ。
残りは段ボールに詰め直し、封は出来ないけれどなんとか一箱に収まった。
「改めてすごい量ですね…」
「いつもは溜まらないうちにお裾分けするんだけどね」
「早く家に帰りたくて後回しにしてたからだろ」
苦笑いする柊木さんから段ボールを受け取った佐々木さんは、顔を顰めたまま楽屋を出て行った。
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