9.何度でもコールバック

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「きゃっ」 なんとか前につんのめらないようにバランスを取って、段ボールを置き直す。 「柚さん?!」 「ごめんなさい、びっくりして」 加湿器が何台か入っているのだ。自分が詰めたものを思い返せば、ある程度重いのは当たり前だった。 何も考えずに持ち上げようとした自分が悪いのだから、と苦笑しながら振り向けば、慌てて飛んできてくれたのだろう、目の前に柊木さんの顔があった。 あ、と思ったときには背中に手が回っていて。 とん、と柊木さんの胸に引き寄せられる。 「良かった、転ばなくて…」 緩く引き寄せられているだけで、柊木さんの熱とシャンプーの匂いが香ってきて頭がくらくらする。 「すみません…」 「柚さん悪くないでしょ」 そう言って柊木さんは私の両腕をそっと掴んだ。 一瞬、息をするのも忘れて、しんとした気配が満ちる。 「しつこいって思われるかもしれないけど、言わせてほしい」 真正面から向かい合って、じっと顔を覗き込まれる。 「好きだよ」 「え……?」 囁かれた言葉に目を瞬かせれば、柊木さんが不安そうに見つめてくる。 全身の力が抜けて、すとんと床に座り込んでしまった。 「ごめん」 大きな手が私の頭を撫で、頬に滑り落ちてきた。 どくどくと、けたたましく鳴る自分の胸の音が室内に響いているような気がした。 「往生際が悪いって、わかってるんだけど。こんなに諦められないの、初めてで」 柊木さんの伏せた瞳を彩る睫毛が、揺れている。 こんなに近い距離にいるのだ、と思うと同時に、不安ではなく喜びを感じている自分に気づいた。 頬を撫でる大きな手に、自分の手を重ねる。
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