10.エピローグ

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うーんと唸っていると、知らぬ間に伸びてきた指に顎を掬われた。 ちゅっと軽く口付けられて、びくりと肩が震える。 それでも目を閉じれば、今度はしっとりと唇が重なった。 時折啄むように舐められ、逃げようとしてもあっさりと捕まって、今度は宥めるように優しく口付けられる。 「んっ……」 何度も繰り返して息苦しくなってきた頃、ようやく唇が離れていった。 間近に柊木さんの濡れた唇が見えて、かっと体が熱くなる。 そんな私に気づいてか、柊木さんはそっと背中を撫でてくれた。 「ね、柚さん。不安があったら何でも言って」 「……え」 「お互いに何でも言って何でも聞く。それだけ約束しよ」 私が子どもの頃に感じた恐怖は、置いていかれることと言葉を嘘だと知ってしまうことだった。それは多分、柊木さんには当てはまらない。母と柊木さんは違う人間だから。当たり前のことなのに、時々立ち竦むように捕われてしまう私に、柊木さんは約束をしてくれる。 「はい、ありがとうございます」 「ん」 満足そうに頷いた柊木さんは、また唇を寄せてくる。 今度はさっきよりも強く。ぎゅっと閉じた唇を抉じ開けるように舌先が動く。 ぞわりと背筋に快感が走って、思わず柔らかいソファの上を後ずさった。 「やっ……」 「ごめん、それは聞けないかも」 「何でもって言ったのに……」 「じゃ、まず本当に嫌か聞かせて」 そう言って、もう何度も目にした笑みを浮かべた柊木さんは、長い指で私の唇をなぞる。 深い瞳に捕われて目を逸せない私の方が、明らかに不利だ。 「好きだよ」と囁く声に、抗うことはもうできなかった。 End.
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