9.何度でもコールバック

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「私も、好きです」 「え?」 ぽかんとまるで鳩が豆鉄砲を食ったような声が漏れ聞こえた。 お互いに、きょとんとした顔で見つめあう。 「え、うそ」 「うそじゃないです」 ぴたりと動きの止まった大きな手を掴み、ぎゅっと指を絡める。 「私も、柊木さんが好きです」 改めてそう言い終わるや否や、反対の腕で力強く抱きしめられた。 さっきよりもっとくっついて、柊木さんの鼓動も私と同じくらい早く高鳴っているのを感じる。 「嫌われてると思った」 「最初は、何なのって思ってましたよ?言いたくないことばっかり聞いてくるし」 「う……ごめん」 「でも最初だけでした」 「うそだ」 「うそじゃないんですって」 「だって、この前……帰っちゃったから」 突然キスされた日のことだろう。 柊木さんが口籠る。 「あれは……びっくりして。突然だったし、何も言ってくれないし」 「俺の気持ち、絶対バレてると思ってた」 「いや普通気づかないですよ」 「佐々木には一瞬で気づかれたから」 「大体、人気俳優にもしかしたら好かれてるかも?なんて思う人います?」 「俳優とか関係ないけど……そっか、でも柚さんのそういうところが好きなんだった」 さらりと好きと言われて、今更頬が熱くなってくる。 誤魔化すように額を押し付けてーーーーー。 がちゃんと扉の開く音に、思わず飛び退いた。 入口で佐々木さんが、中途半端な距離で、しかも座り込んだまま向かい合う私たちを呆れた顔で眺めている。 「鍵くらい閉めるように」 「すすすすみません」 「柚さんはいいんですよ、お客様なんだから。浮かれてる悠真にです」 「わかってるよ!」 「さ、それでは帰りましょうか」 佐々木さんはそう言って、段ボールを持ち上げた。 柊木さんの手がまた近づいてきて、ぎゅっと握られる。 「荷物くらい持てるよな」 「だからわかってるって!」 表情を変えずにこちらを見遣った佐々木さんの言葉に、名残惜しそうな親指が私の手を撫でて離れていく。 わずかに苦笑したような柊木さんと目が合った。 「早く帰って、ゆっくりしよ」 こめかみにちゅっと触れられて、思わず佐々木さんを見たけれど、ちょうど荷物と格闘しているところで気づいていないようだ。なんだかんだ柊木さんも抜け目ない。 もう、と思いながらも、二人立ち上がり楽屋を後にした。
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