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「いないか、やっぱりね」〈今日もハズレ〉
〈何度も会える訳ないわ〉「不安なのよね」
地下牢で執行猶予を待つみたいな心境で、固まったカーソルの上の蠅取蜘蛛を見つめ、ネカフェで何時間も粘ってじっと待ち伏せ。朝から絶食中も同じだから緊張しかしない。冷房が効き過ぎ。熱いお茶が飲みたくなる。架空のGFとチャットして恋愛相談に乗った。精神科医がカウンセリングでもするように。
〈優柔不断になっちゃう〉「会いたいなぁ」〈しかし、連絡はないなぁ〉「浮気かもね」
夜を超えて、昼も過ぎて、また朝になる。あんなに楽しみにしていた夕暮れにも……。待ち惚けた私の元に誰も来なかったけれど。
〈恋に生きるの〉「『命短し恋せよ乙女』」
チャリンコの鐘の音が幸せの訪れを報せ、丸い昇降口から地下のネカフェを脱け出す。歯磨きして貰ったヒポポタマスのポスター、赤い橋の上に止まったCitroënを見送った。煙立つ混凝土から目眩く陽炎を潜り抜ける。後ろ向きに倒れたい砂を噛むような白昼に。
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