One♡Widow

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「うへへ、オッパイ揉ませろ、クソビッチ」 「誰がビッチだ、パンクス。クソして寝ろ」    ブルーベリーと辛子(からし)味のホットドッグで、汚れた指をクロコダイル柄の革パンで拭い、目を回しながらコーラを飲んでキメていて、ニヤニヤしている前歯の溶けたSidもどき(・・・・・・)に、肩を抱かれて口説かれても淡白に蹴散(けち)らす。深夜しか開かないクラブハウスの扉の前で。 「……いた! ネカフェのバイト君――!」  階段下にパジャマのまま座り込んでいる、毛玉だらけのカーディガンの背中を見つけ、私は音を立てないようにステップを降りた。抜き足差し足とは裏腹に心拍数は駆け足だ。アッシュの髪をピアスだらけの耳にかける。  太陽は真上。降り注ぐ淡水色の強い光で、鉄筋階段の隙間から伸びた影はストライプ。汚れた素足の爪先の動きを目で追いかける。微かな足音に気づいて、少年は顔を上げた。下から感じた露骨な視線は熱を帯びている。 「そこにいるのって、パンツ見たいから?」  いつものようにからかっても反応は同じ。無言。彼は何を言っても顔色を変えないし、むっつりと黙り込んで不機嫌に目を伏せる。虚ろな眼差し。長い睫毛の影が頬に落ちた。
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