Seven♤Gigolo ※

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「貴女に俺が花を贈るよ」「ほんと……?」 「ああ、ほんとさ」「嫌な記憶ばっかりよ」  それでも、やめない。やめてはいけない。愛と呼ぶにはまだ早過ぎても、手探りでも。どう転んでも、足掻(あが)いても、掴み取るなら。手の中、腕の中に今、愛しい(ひと)がいるなら。 「俺はよく思い出せない」「ママ……も?」 「男と出て行った。それっ切り音沙汰なし」 「そう……」「これからまた塗りかえよう」 「……そうね」「二人で――」「ええ……」  熱く、甘い恋をするなら生きている間に。せめて、生きている間は独りにならないで。必ず来る。俺にもいた、彼女が。今ここに。身体を通して、心に触れる時を大切に――。 「セックスする前にする会話じゃないよね」 「逆に、どんな話するもん?」「話しない」 「黙っていてもいいよ」「手を握っても?」 「うん……(しゃべ)らないでいい」「静かね……」  生温いビール、食べ掛けのオレンジの(へた)、パーティー開けのポテトチップス、空き瓶、青い口紅、蛇行するチェーン、菊石(ammolite)足枷(anklet)。残り数本のPEACEの箱、百円ライター。砂嵐の番組、変える気すらないチャンネル。途切れるラジオから流れるボブ・マーリー。壊れかけのクーラーを起動させる高い電子音。雨が降っていて、遠くで電車が走っていた。  訳もなく無心に、その全てを愛しく想う。目を逸らしたまま繋いだ、指の冷たささえ。
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