妖狐

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妖狐

大野慎太郎(おおのしんたろう)はスマホの画面を見つめて、すうっと息を吸い込んだ。 「一回ガチャ」と書かれた緑色のボタンを、人差し指でタップする。 目を閉じて、心の中で静かに念じる。 「来い、来い。妖狐(ようこ)……」 チャラリララー、という軽快な音楽。 目を開けると、画面が金色に光っている。 こうして光るのは、レアカードだ。 慎太郎の口角がゆっくりと持ち上がる。 期待に胸をはずませて画面を見つめると 「河童のしんすけ☆☆☆☆☆」と表示されている。 「僕、しんすけえ~」 河童がばかに明るい声を出す。 「河童かよ、くそっ」 慎太郎はスマホをソファに投げつけた。 もうコンビニのバイトに行く時間だ。 「また、課金しないとなあ……」 ため息をつきつつ、つぶやいた。 慎太郎のバイト代は、今日も「あやかしのジャスティス」のために消えていく。
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