妖狐

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バイト先のコンビニに到着した。 シャツの上から制服をかぶる。 タイムカードを押して、引継ぎノートに目を通す。 「おはようございまあす」 同じコンビニの制服を着た手嶋夏希(てじまなつき)が、慎太郎に目くばせを送ってくる。 店長にバレないように、慎太郎の耳元でささやく。 「おお、おぬしに会いたかったぞ」 慎太郎は笑って突っ込みを入れた。 「似てないよ」 夏希は慎太郎のあやジャス友達、いわゆる「あや友」だ。 バイト先で会うたび、ゲームの情報を交換しあっている。 夏希は、このゲームに出てくる猫又に似ている。 猫目なのだ。 慎太郎と同じ十九歳だと聞いていたが、小柄で、高校生くらいに見える。 茶色く染めたショートヘアーに、猫又のトレードマークの赤いリボンをつけたら、よく似合うことだろう。 客の途切れた時、店長の目をぬすんで、慎太郎と夏希は、あやジャスの話をした。 「ねえ、あたし今日、お月見妖狐ちゃん当てたよ。あとで画像送るね」 「いいなあ。俺なんて、河童のしんすけだったよ。いらないっての」 「僕、しんすけえ~」 夏希がおどけて、河童の真似をする。 「似てなさ過ぎて、逆に笑える」
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