妖狐

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あがりは、十六時だった。 夏希も同じ時間にバイトを終え、一緒に店を出た。 「すごい雨だねえ」 ジャンピング式のビニール傘を、ぼんっと開く。 風雨と格闘しながら、ふたり並んで国道沿いの歩道を歩いた。 慎太郎のポケットの中で、スマホが震えた。 あやジャス運営からのお知らせかもしれない。 気になった慎太郎は、スマホを取り出した。 左手に傘、右手にスマホ。 前方から、自転車が走ってきた。 雨と風で、前がよく見えないのだろう。 自転車は、決して早いスピードではなかった。 夏希は顔をしかめて、道の左側に避けた。 画面を見ていた慎太郎は、スマホを取り落とした。 自転車が近づいてくる。 慎太郎は、スマホを拾おうとかがみこみ手を伸ばした。 「アッ」と叫ぶ間に、自転車が、スマホを車道にはじきとばしてしまう。
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