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車道は二車線で、多くの車が行きかっていた。
慎太郎は呆然として、それを見つめた。
白い軽。赤いセダン。派手なトラック。
スマホは、車の下敷きになってしまったのか。
いや、まだ無事かもしれない。
さっきまで手の中にあった、白無垢姿の妖狐の微笑が、目の前にチラついた。
――今なら。今ならまだ、間に合うかもしれない。
慎太郎は傘を投げ出した。
憑かれたように、フラフラと車道に出る。
足首に跳ねる水しぶき。
クラクションが鳴る。
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