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懐かしい声が聞こえた。
「よっ」
振り返るとそいつはいた。
そいつは小中高と同じ学校、家も近い、所謂幼馴染だった。
「おまえなんでここに?」
「まあまあ。」
ベンチに座っていた俺の隣に座った。
「で?」
「逢いに来たよ、お前が迷ってるから。」
はっ
自信満々の顔をしているそいつに思わず吹き出した。
そして、何の脈絡もなしに学生時代の話をし始めた。
久々に見たそいつは、あの頃となにも変わってなくて。
あぁ、その笑顔が好きだったんだ、と懐かしい気持ちになった。
ひとしきり話した後に突然、
「お前、まだ俺のこと引きずってるだろ?」
「そんなこと……」
「もういいからな、もう縛られなくていい。十分幸せだったから。今度はお前が幸せになる番だからな。」
そういってそいつは見たこともない真面目な顔で俺を諭した。
「でも、お前になにも……」
「いや、俺は確かに幸せだった。お前がいるだけで、話すことだけでも幸せだったんだ。」
「……蒼介……」
「今はその子、大事にしてやれ、環。」
目を開けるとそこはいつも通りの見慣れた自分の部屋だった。少しだけ滲んで見える気がするけど。
時間を確認しようと携帯を見ると3月17日の時刻は3時40分で。
その日は3年前に蒼介が息を引き取った時間だった。
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