Eri

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Eri

 パァァァァァァァン 「ひゃあああああああ」    そんな私の間抜けな声が、森中に響き渡った。  恐ろしさのあまり、その場に腰を抜かすと、しばらくして草を分け入るように足音が聞こえてきた。 「おい、大丈夫か?」  私に声をかけたのは男だった。私と、そう歳は変わらない若い男。茶髪で、背が高くて、切れ長の瞳が冷たい印象を与える。まぁイケメンと言っていいかもしれない。私は、それをぼーっと見つめる。 「おい」 「あ……」  男が右手に持っている物を見て、頭のどこかがハッキリしてきた。そうだ、撃たれたんだ。運のいいことに、当たらなかったけど。 「大丈夫か?動物かと思ったら人間だったとはな。ここで何をしてる?」 「え……」  動物だと思った? 何言ってるの? 私、危うく死ぬとこだったんだけど。 「?しゃべれないのか?」  しゃべれない。まだあの銃声が頭の中でリフレインしていて、体の震えが治まらない。私は、何とか声を発しようと喉に力を入れる。 「ふ、ふざ……」 「は?」 「ふざけ……ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!あんたっ!何の恨みがあってっ!もう少しで死ぬところだったんだからね!」  大きな声が出たのをきっかけに、私は男に掴みかかった。 「うわっ!おい!やめろ!」    男は焦って身をよじる。私の唾が男の顔に飛びまくってるけど、そんなことはどうでもいい。とにかく声が枯れるまで罵ってやらないと、私の気が済まない。 「わ、私はねぇ!私はねぇ!」 男の首もとを掴んで前後にガクガク揺さぶると――。  ぐごぉぉぉぉぉぉぉ  地を這うような低い音が、私と男の動きを止めた。まるで、森の神が私達の争いを諫めるように。大地が二つに裂けるように。ええと、それから……と、とにかく、そういう音がした。  男は目を大きく見開いて、それから真剣な顔で私を見つめた。 「腹が減ってるのか?」    最低最悪のそれが、私とカイトの出会いだった      
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