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放課後に街へ出れば、どこもかしこもカップルだらけ。
よく観察していると、みんながみんな楽しそうなわけでもない。つまらないという表情をしている女の子。浮気をしているのかもしれない、彼女そっちのけでスマホに夢中な男の子。よくあることだよね。
ねぇ、でも分かってる?
そうやって約束された2人の時間があるっていうことが、どれだけ貴重で素晴らしいことか。織姫と彦星なんてまだマシなんだよ。彼らは年に一度、必ず会えるじゃないか。カイトは、私がいつ現れるか、もう現れないのか、それすら分からないまま今もずっと待っている。
そんな苦しい恋愛って、ある?
私は18歳、カイトは45歳。
私達は、穏やかな時間を過ごしていた。
泣いたり苦しんだりするのは、会えない時だけすればいい。今は、再会できたことを心から感謝して、2人で静かに愛を交わす。
私は、カイトの少したるんだ頬を撫でる。もともと少し鋭い目つきをしていたから、今の方がカイトの優しさがうんと際立つ。うん、年をとるのも悪くない。
「かっこいいよ、カイト。若い時よりも素敵」
「そうか。君には何も言うことがないな。どこも変わっていない」
「失礼な。一応1つだけ年をとりましたよ」
もう、焦って時間の隙間を埋めるようなことはしない。後継者のこととか、気になることはたくさんあるけど、それよりも気持ちを通わせることに集中したい。
私達の恋の終わりがいつになるか、私には見当もつかない。あなたはどんどん老いていく。
添い遂げる覚悟を決めたと言ったら、多分ウソになるけど。でも、あなたが待っていてくれるというなら、私はずっと傍にいる。
気持ちが繋がっている限り、私は一緒にいるから。
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