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エリは、堪え切れなくなったように嗚咽した。
「カイト……カイト。ありがとう。私も大好きだよ。今でも大好き。だから、まだ行かないで。私を一人にしないで」
とめどなく溢れる彼女の涙を、力の入らない腕に喝を入れて指先で拭った。
「エリ。大丈夫だ。恐れなくていい」
そう、俺は知っているんだ。
「俺達は、必ず再会できる。そして今度こそ、2人一緒に生きていくんだ」
「カイト……?」
「ある時、夢を見た。俺が、見たこともない世界で君と歩いていた。君も俺もとても幸せそうだった。昔、言ってただろ?空飛ぶ車があるって。それも見たぞ。鳥のような、おかしな形をしていたな」
エリが、信じられないといったように俺を見つめる。
「俺は理解したんだ。これは、俺が死んだあとに起こることだと。俺は、君の世界に生まれ変わる。これで終わりじゃないんだ」
「また……また会えるの? 今度は私の世界で会えるの?」
エリが、涙でぐしょぐしょの顔で子供のように聞く。
「あぁ。会える。信じてくれ。だから、俺を見つけてほしい。俺は、必ずいるから」
エリは、やっと安心したような顔をしてうなずいた。
「カイト。カイトも私のこと、見つけてね。絶対だよ。これ、毎日付けて待ってるから」
そう言ってエリが胸元から引っ張りだしたのは、いつかの時に彼女に買ってやったネックレスだった。とうの昔に買ったそれは、そんな時間の流れを感じさせないほど、輝きを放っていた。
「まだ持っていたんだな」
「当たり前でしょ。なくさないように、ずっと身に着けてる」
やっとエリが笑った。よかった、最後が彼女の泣き顔なのは嫌だった。
「エリ……少し、眠ってもいいか?」
エリは優しくうなずく。
「君はそのまま、笑っていて。俺が眠りにつくまで。そしたら――」
次は君の世界で会おう。
エリは、また目に涙をたくさん溜めて、それでも微笑み続けてくれていた。
大丈夫。これは悲恋なんかじゃなかった。物語にはまだ続きがある。
俺が死んで、再び生まれ変わり、そしてようやく完成へと向かうんだ。
エリ、愛している。また会おう。
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