Eri

3/13
前へ
/18ページ
次へ
 翌日、ここに迷いこんで4日目。 帰れる見通しが全く立たずに朝から部屋で落ち込んでいると、カイトがやってきて言った。 「気晴らしに遠乗りでもするか?」  カイトに馬に乗せてもらい、野原を駆け抜ける。カイトの屋敷の周りは広い野原で、その四方を森が囲んでいる。ここ全てが彼の家の敷地なんて、信じられない。でも、障害物のないだだっ広い野原を風を切って走るのは気持ちいい。少し、気分が晴れるのを感じた。 「エリの故郷はどんなところなんだ?」    大きく枝を広げた木の下で、2人で休憩していると、カイトはそう聞いてきた。 「うーん、何と言っていいか分からないけど、平和な国よ。あとね、ここよりも交通が便利ね。飛行機っていう空飛ぶ車もあるよ」 「車が空を飛ぶのか?それは一度お目にかかりたいな」  そう言ってカイトは、切れ長の目を細めて笑う。鋭い目つきの印象だったけど、笑うと思いのほか柔和な雰囲気になる。   「……カイト、気を使って連れ出してくれたんだよね?ありがとう」 優しくないなんて思ったことを、恥ずかしく思った。 「いや、俺にできることはこのくらいしかないからな。帰る手立てが見つかるまで、ここにいていい」 「……ありがとう」  心細さに震える今の私に、カイトの優しさはちょっと反則だ。下を向くと涙が止まらなくなりそうだから、だだっ広い野原を、睨むようにただ見つめていた。      
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加