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翌日、ここに迷いこんで4日目。
帰れる見通しが全く立たずに朝から部屋で落ち込んでいると、カイトがやってきて言った。
「気晴らしに遠乗りでもするか?」
カイトに馬に乗せてもらい、野原を駆け抜ける。カイトの屋敷の周りは広い野原で、その四方を森が囲んでいる。ここ全てが彼の家の敷地なんて、信じられない。でも、障害物のないだだっ広い野原を風を切って走るのは気持ちいい。少し、気分が晴れるのを感じた。
「エリの故郷はどんなところなんだ?」
大きく枝を広げた木の下で、2人で休憩していると、カイトはそう聞いてきた。
「うーん、何と言っていいか分からないけど、平和な国よ。あとね、ここよりも交通が便利ね。飛行機っていう空飛ぶ車もあるよ」
「車が空を飛ぶのか?それは一度お目にかかりたいな」
そう言ってカイトは、切れ長の目を細めて笑う。鋭い目つきの印象だったけど、笑うと思いのほか柔和な雰囲気になる。
「……カイト、気を使って連れ出してくれたんだよね?ありがとう」
優しくないなんて思ったことを、恥ずかしく思った。
「いや、俺にできることはこのくらいしかないからな。帰る手立てが見つかるまで、ここにいていい」
「……ありがとう」
心細さに震える今の私に、カイトの優しさはちょっと反則だ。下を向くと涙が止まらなくなりそうだから、だだっ広い野原を、睨むようにただ見つめていた。
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