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5日目の朝。
今日もカイトはガーデンルームにいて、中央に置かれた椅子に腰かけて庭を眺めている。私は、今日はカイトの話を聞いてみたいと思った。
「カイトはいつもここにいるんだね」
「エリ。あぁ、ここがこの家で一番落ち着くんだ」
カイトが隣の椅子に座るよう促したので、私は遠慮なく腰かける。全面ガラス張りのこの部屋からは、整然と手入れされた美しい庭が一望できた。緑や赤、黄色といった草花の鮮やかな色が、目を楽しませてくれる。メイドのミーシャが、タイミングよく紅茶を私たちの元に持ってきてくれた。ここの使用人はみんなできた人達だ。
「素敵だね。確かに毎日でもここでぼーっとしたくなっちゃうかも」
「母さんが好きな庭だった。だから手入れは欠かさないんだ」
「そういえば、ご両親は?」
この屋敷で、カイトと使用人以外の人を見たことがない。
「両親は5年前に事故で2人とも他界した。今はこの屋敷には俺一人だ」
「……そうだったんだ。寂しい……よね」
「まぁ、な。でも、ロッシュ達がいてくれるからな。そんなに悪いものでもない」
カイトは小さく笑う。でも、その笑顔の中に、傷ついて膝を抱える彼を見たような気がして、私は胸が締め付けられた。
「うるさい女が増えたから、賑やかになっていいでしょ?」
カイトにもっと笑ってほしくて、わざとおどけたように言った。
「お前の場合はもっと黙った方がいいぞ。しゃべりすぎだ。慎ましさを持つべきだ」
「残念。私のモットーは、言いたいことは率直に言う、よ」
なんだよ、それ、と笑うカイトを見て、なぜだかとても嬉しかった。ちょっとだけ、ここにいることが楽しいと思えた瞬間だった。
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