1人が本棚に入れています
本棚に追加
6枚目 置去の人
1月11日(日)
ただのメモを見てるのに、
複雑な気持ちだ。
こいつには、手の上で転がされているような気がする。
もう、気づけば手紙代わりに、
こうして付箋でくだらないやり取りをしている。
俺も、普段使いもしないのに
もしかしたら返信があるかもしれないと思って、
ポストイットを鞄の中に入れている。
別に、好きな女と文通してるわけでもないのに。
前の彼女も、そうだった。
思わせぶりなことばかり言って、ふわふわしたような人間だった。
「好きだ」と言うと、なぜか顔を曇らせる。
俺たちは、あの日を境に好きあう関係ではなくなっていった。
ただ、生活を共にするだけの人間同士になっていった。
あいつが出ていく日、俺に対して、「ありがとう」とだけ言ってきた。
別に、あの日は引き留める理由もなかった。
俺たちは終わる気がしていた。
泣くほど、悲しい恋でもなかった。
あれ、俺なんて返信したっけ。
とりあえず、なんか書いとかなきゃな。
「こちらこそ」
最初のコメントを投稿しよう!