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未来
高校卒業がせまる18歳、施設を追い出されるタイミングで養子縁組の話が来た。
小さい子ならまだわかるがどうして俺のような大人に近い年齢の人間を引き取りたいのか不審に思ったが、望んでいた大学進学がこれで叶うかもしれない。
「堂島一也(どうじまかずなり)です。はじめまして」
初めて対面したその男性は40代くらいの紳士だった。
これまでも何人か養子を取っているらしく、金銭面的に不安要素はないようだ。
何か事情があったんだろうけど結局親に捨てられた俺は相当荒んでいたが表面上はおとなしい、手のかからない人間を演じていた。
職員も人間、仕事でやっているだけで可愛くない子なんか面倒みない。
「智(とも)、です。はじめまして」
俺は人見知りを演じながら『誰だこいつ』と思っていた。
相手は消えない微笑で俺を見ていたが、おそらく小賢しい態度なんて見抜かれていたんだろう。
施設の大人たちはそわそわしていた。どうやらこの話は相当ラッキーなものらしい。
堂島家は資産家で金銭面では心配はないし当主も見た限り悪い所は見当たらなかった。
ただこの人の奥さん、つまり未来の俺の義母は不思議な別世界に住む住人なんだそうだ。
「おなかに宿った子を育てられない人なんだ」
俺はその病名を初めて知った。
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