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食事が終わると清香さんはすぐ部屋に帰ってしまう。
「オンラインゲームが好きでね。彼女は何かにハマるとずっとやるんだ」
「そうですか」
堂島さんは慣れているのか気にしない。
「水谷さんと遊んでるんですか?」
車椅子を押しているヘルパーくらいしか親しい人はいないと思ったので聞いてみた。
「複数でやってるみたいだよ。その中に春馬もいる。芸能の仕事は待ち時間が長いらしくてその合間に参加するそうだ」
ほかのお手伝いさんとはほとんど会ったことがない。完全に裏方なのか他は運転手くらいしか知らない。
「水谷さんって住み込みなんですか?」
堂島さんはにやっと笑って
「私はパートですので、って言うのが口癖でね。時間が来たら帰るよ」
個性的な人が多いけど普通だ。清香さんが見ている幻も、見えても見えなくてもそんなに問題ではない気がしてきた。
「本当は見える息子が欲しかったのは俺かもしれない」
どうして俺だけ息子さんと認識したのか、今まで見ていた幻覚はどこにいったのか。
人間の脳はうそをつく。
「疲れましたか、父さん」
「・・・そうだね。もう清香にやってあげることはない」
「清香さんはあなたに騙されてあげてるんじゃないですか?」
ハッとして俺の顔を見る。
「3人も青年を紹介されて、ピンとこないほど頭が悪い人には見えません。俺だけ息子と認識したフリをして父さんを楽にしてあげたかった。ここで終わらせようと」
堂島さんは何も言わなかった。
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