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随分考え込んでいたのか、セフィが心配そうに声を掛けて来て、グロースはハッと我に変える。
考え出すと平気で数時間は自分の世界に入ってしまう悪い癖だと心の中で失笑した。ディンスもじっとグロースの様子を見ている。
「…悪い。ちょっと考え事をしてただけだ。…っと、もうこんな時間か」
「やたら時間気にしてるけど、何かあるの?」
「後10分以内に此処に王国騎士団が来る。人数は7人だ」
「馬鹿なの!?早く言いなさいよ!」
サラリと恐ろしい事を、あくまでも冷静に言い放ったグロースに対してセフィは突っ込まざるを得ない。パシリ、と軽くグロースの頭を叩く。
それを見たディンスの様子が変わった。目をパチパチさせてセフィとグロースを交互に見ている。少々混乱しているようだった。
それに気付いたグロースがぽん、とディンスの頭に手を置く。
「今のは悪意があった訳じゃねぇし、全然痛くもねぇから安心しろ」
何か不味い事をしたのだろうか、と聞きたかったが今は時間がない。王国騎士団に駆けつけられたら非常に困る。3人は扉の風穴を抜けて入り組んだ路地裏に逃げ込んだ。
「…はぁ、はぁ…。あたし、絶対今日だけで寿命何年か縮んだ気がする…。あ、そうだ。さっきは…ごめん。悪気はなかったけど、何か不味かったのよね?」
逃げる時は全力疾走だったので、ディンス以外はクタクタだった。特にグロースは力尽きた様に座り込んでいる。今にも死にそうな声でちょっと待て、と呟く。
ディンスは息切れ一つせずにキョロキョロと辺りの様子を伺っているのに対し、グロースは呼吸を整えるのに必死だ。
「………悪ぃ。さっき…ってああ。あれはディンスの防衛本能が狂ったんだろ。俺に攻撃するヤツ=敵って認識してるからな、コイツ。でも、アンタは悪いヤツじゃないってわかってるしどうしたら良いか思考がパンクしたんだろうな、多分」
盗賊ギルドの男に絡まれていた時にやたら冷静だったのはそれだったのか、と納得するセフィ。
ゆっくり肩で呼吸を整えてからグロースはスクリーン画面を開いた。
「近くに生命反応はねぇな。ラボまでは…と。もうちょいか。暫く休んでから行こうぜ…。ディンス、見張り頼む」
短距離しか走っていない筈だが、相当疲れたらしい。
スピー、とグロースはすぐさまに寝息を立て始めた。
「休むって…こんな所で寝るの…?どんな神経してんだか…」
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